2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560830
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三村 治夫 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (90190727)
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Keywords | 船底防汚剤 / 有機スズ化合物 / 長期的遺伝毒性 / 海洋微生物 / 生物吸着 |
Research Abstract |
船底への生物付着を抑止することは、船体の推進効率を維持するうえで重要であり、多種多様な船底防汚剤が開発され使用された。特に、有機スズ化合物は難分解性で海底堆積物に吸着しやすい性質がある。貝類に奇形が発現したり、生物濃縮が確認されたりしたことで、2004年に国際条約が発効し、当該化合物の船底防汚剤としての使用が全面禁止されている。それにもかかわらず、依然として本化合物は海底に残留し、生息する貝類や甲殻類、海洋細菌等に毒性を付与し続けている。 初年度(平成21年度)に,最も船舶出入港数の多い東京湾および主要港の堆積物から、塩化トリブチルスズ(TBTCl)耐性の海洋細菌10株を単離、分類した。当該年度では、単離株およびその単離株と類縁性の高い標準株2株を対象に休止細胞を調整し、TBTCl耐性実験を実施した。具体的には、TBTCl添加量を最終濃度100μM一定とし、細胞浮遊液中の生菌数を10^<3.0>から10^<9.0>個オーダーml^<-1>まで変化させることで、菌体一個体と相互作用するTBT^+量を変化させて、生存菌数を計数した。その結果、最も高いTBTCl耐性を示した単離株は、東京湾検疫錨地の堆積物から単離したPhotobacterium sp.TKY1株であった。本株は1mlの細胞浮遊液中で、一菌体あたり10^<12.8>個のTBT^+分子と相互作用しても生存できた。一方,他の9株は,1mlの細胞浮遊液中の生菌数を減少させ、これにともない一菌体あたりと相互作用するTBT^+分子数が相対的に増加すると、生存数の減少が確認できた。加えて、類縁性の高い標準株の中にも、当該単離株と比べ、TBTCl耐性が高い株があったことから、堆積物中でのTBTCl長期暴露による耐性菌の出現頻度は総じて低いと推定した。単離した10株中で最もTBTCl耐性が高かったPhotobacterium sp.TKY1株を対象に、TBT^+吸着量を定量した結果、添加したTBTCl量の88%以上が菌体と相互作用していることがわかった。これらの結果は,TBTCl耐性には、TBT^+の細胞内への侵入を防ぐ菌体表面の化学組成が重要な役割を果たしていることを示唆している。
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