2010 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における再生を支える細胞とシグナルのメカニズム
Project/Area Number |
21570004
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川上 厚志 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 准教授 (00221896)
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Keywords | 再生 / 組織ホメオスタシス / シグナル伝達 / 小型魚類 / ゼブラフィッシュ / トランスジェニック |
Research Abstract |
多細胞生物の体が一定の大きさと形を形成するには、組織ホメオスタシスと呼ぶ統御メカニズムが必要である。このメカニズムは、生物体組織の維持、細胞のターンオーバー、傷害時の組織修復や再生にも関わっていると考えられる。しかし、このメカニズムは、未だにほとんど理解が進んでいない。 私達は以前の研究で、再生組織が多様な細胞小区画(コンパートメント)からなることを示したが、これらの再生ニッチにおける細胞がどのように組織再生過程に働いているか明らかにするためには、個々の細胞を追跡するような方法が必要である。このために、昨年度の研究で、生涯を通じてユビキタスに蛍光タンパクを発現する系統の作製に世界で初めて成功し、成体でCre-lox組み換えを用いた細胞トレーシングを可能にする系の作製への道を開いた。本年度は、この系統と組み合わせて再生細胞をラベルするCreドライバー系統の作製を進めた。Junb,mmp9などの再生遺伝子のプロモーターと、カノニカルWntシグナルに応答するlef1結合配列をタンデムに持つレポーターを組み込んだCreコンストラクトなどを作製し、トランスジェニック系統の作製が進行中である。 また、再生細胞の維持ができない変異体clocheについても解析をさらに進めた。昨年度の解析で、再生芽細胞が選択的に細胞死を起こすこと、よく知られた経路であるp53には依存しないことを明らかにしているが、本年度は、細胞死経路および原因遺伝子について解析を進めた。今年度、細胞増殖に入った再生芽細胞はG1/S期で停止していること、細胞死はp53非依存であるがカスパーゼ3/9によってアポトーシスを起こしているらしいことを明らかにした。変異遺伝子の解析も進め、cloche領域の7つの遺伝子を調べたが変異は発見できていない。今後、さらに大規模な配列解析によって遺伝子の特定を行う予定である。
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