2010 Fiscal Year Annual Research Report
飛ばないアリ共生型アブラムシの翅形成と維持に関する研究
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21570012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八尾 泉 北海道大学, 大学院・農学研究院, 研究員 (70374204)
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Keywords | 共生関係 / アブラムシ / Tuberculatus属 / wing loading / 中性脂質 / 系統的種間比較 / 飛翔筋 / 翅面積 |
Research Abstract |
主にコナラ属樹木の葉にコロニーを形成するTuberculatus属アブラムシは,国内にアリ共生型9種とアリ非共生型11種が確認されている。本属アブラムシは,寄主非転換性で且つ単為生殖世代の成虫はアリ共生・季節・コロニー内密度に関係なく全て有翅虫となることが知られている。先行研究の結果から,アリ共生種のT.quercicolaとT.sp.Aの集団遺伝構造は著しく局所的な特徴を示し,これらの種が翅を持つにもかかわらず,移動や分散をほとんど行っていないことが明らかになっている。アリ随伴には捕食者からの保護というベネフィットがあるので,飛翔しないことは適応的な意義がある。しかしながら,翅自体に機能的な意義があるのかどうかは不明のままである。そこで今年度は,(1)Tuberculatus属アブラムシ20種を対象に,翅面積に対する体の体積の割合(wing loading)を算出し,系統的交絡を除去した方法で種間比較を行った。さらに,(2)アリ共生型T.quercicolaと非共生型T.paikiの相対的な中性脂質含有量と飛翔筋発達度合いを比較した。その結果,(1)系統的種間比較法からは,アリ共生型アブラムシのwing loadingは非共生型に比べ,有意に大きいことが示された。つまりアリ共生型アブラムシは,翅面積に比して体が大型化しており,飛びにくい体になっていると考えられた。また(2)中性脂質含有量は2種間で有意差はなかったが,T.quercicolaの飛翔筋は相対的に発達が弱かった。つまり燃料には差はなかったが,エンジンには有意差があったといえる。これらの結果から,アリ共生型アブラムシにおいて,栄養投資は翅形成やその維持よりも胚子数増大に割かれていることが示唆された。
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Research Products
(5 results)