2011 Fiscal Year Annual Research Report
冷温帯林における積雪下でのリター分解菌類群集の組成とその分解酵素活性
Project/Area Number |
21570013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮本 敏澄 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (00343012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸田 圭一 北海道大学, 大学院・農学研究院, 講師 (80322840)
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Keywords | リター分解 / 菌類群集 / 低温 / 積雪 / 分解酵素 |
Research Abstract |
本研究は積雪時の低温下において特有の土壌微生物群集のなかでも重要なリター(落葉)分解に関わる菌類はどのような種によって構成されるのか、またそれらが低温に適応した生長特性や分解酵素の産生能を明らかにすることを目的とした。本年度は、積雪時に土壌が凍結せず0℃で安定した環境から、氷点下となる頻度が高くなり凍結深が増加するように環境勾配のある北海道内4カ所の森林で調査したリター分解と分離菌の種構成や酵素産生能の有無について解析を行なった。積雪下のリターの分解はいずれの調査地でも認められたが、地表温度が0℃で安定した環境でより速く進む傾向が認められた。また、落葉中のN含有量についてもより多く増加していた。これは0℃では氷点の環境と比べ活発にリター分解活動を行なう菌類のバイオマスが増加していることを示している。さらに落葉がパッチ状に白く脱色された部分が多く観察され、落葉の主要成分中で最も難分解性であるリグニン様の物質の分解が起きていたと考えられた。各調査地のリターから分離された菌類の種組成は冬期と夏期では大きく異なった。また、積雪開始後の12月と3月の菌類相を比較した場合と、地域間の菌類相を比較した場合にも違いが認められた。落葉から分離された菌類の多くは子のう菌類に属したが、分生子などの形態的特徴やDNA情報が乏しく分類学的に未報告の種がほとんどであった。分離された菌類の中には0℃で菌糸伸長し、フェノールオキシダーゼの産生能を示すものが存在した。以上から森林の積雪下には分類学的に未解明な種が多く含まれる独特な菌類相がみられ、0℃で落葉中のリグニン様成分の分解に関わる酵素を産生する能力を備えた種が存在することが明らかにされた。こうした菌類の働きは多雪地域における積雪下のリター分解に寄与しているものと考えられる。
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