2009 Fiscal Year Annual Research Report
里山景観を利用するアカネ属ノシメトンボの生活史戦略
Project/Area Number |
21570015
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邉 守 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (80167171)
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Keywords | ノシメトンボ / ギャップ / 静止場所 / 採餌量 / 排出糞量 / 日あたり摂食量 / 卵生産量 / 水田訪問回数 |
Research Abstract |
ノシメトンボの成虫は、生涯の大部分を水田の周囲の里山林に生じたギャップで過ごし、産卵を行なうときだけ水田を短時間訪れている。林内ギャップにおいて、彼らは木本の枝先や草本の茎先に静止し、視界に入った飛翔性小昆虫に対して飛びかかって捕獲するという「待ち伏せ型」の採餌行動を示す。林内ギャップにおけるノシメトンボの成虫の採餌活動について調査を行なったところ、静止場所の高さは、朝夕に高く、昼に低くなっており、飛翔性小昆虫の豊富さの日周変化と対応していた。日あたり採餌飛翔回数は雌で251回、雄で182回となり、捕獲成功率から実際に捕獲に成功している小昆虫の頭数を求めると、それぞれ109頭と89頭となった。本調査地に設定した里山林に存在するギャップでは、1日に合計2,935,300頭の飛翔性小昆虫がノシメトンボによって捕食されていると計算される。一方、捕獲した成虫の排出糞量を測定し、既知の餌量を与えた成虫の排出糞量と比較して野外における摂食量を推定したところ、乾燥重量ベースで、野外観察で得た摂食量とほぼ同量である事がわかった。そこで、推定された日あたり摂食量を用いて雌を室内飼育し、体内における卵生産量を測定したところ、水田へ産卵のために訪れる個体がもつ成熟卵数(約500卵)まで生産するのに、1週間はかかっている事がわかった。したがって、雌の水田訪問は週に1回程度といえる。この結果は、これまでに標識再捕獲調査などで明らかにしてきた林内ギャップにおける雌過多を支持している。
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Research Products
(7 results)