2010 Fiscal Year Annual Research Report
島嶼環境における捕食者の食性転換:自然選択と遺伝子流動の量的評価
Project/Area Number |
21570024
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
長谷川 雅美 東邦大学, 理学部, 教授 (40250162)
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Keywords | 島嶼 / 捕食者 / 爬虫類 / 食性 / 自然選択 / 系統地理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、島嶼生態系における地史的時間スケールでの食物連鎖の形成過程と、構成種の適応形質の進化を、伊豆諸島、伊豆半島、および本州におけるトカゲ、ヘビ類を含む食物連鎖を対象に、シマヘビとその餌生物であるトカゲ、カエルを対象とした系統地理学的解析を行い、島嶼環境における捕食者-被食者関係の成立順序と年代を推定する。そして、ヘビの食性転換にともなう新たな形質の獲得と、古い適応形質の消失過程に及ぼす、自然選択、遺伝的浮動・流動の相対的重要性を評価する。 22年度の主な成果は、以下の3項目である。 1) 伊豆諸島と本州集団の遺伝子サンプリングによって、伊豆諸島のシマヘビが西日本、および東日本から独立に移入した集団に基づくことを明らかにし、Journal of Biogeography誌にその成果が掲載された。 2) シマヘビの頭部形態の測定により、オカダトカゲを捕食することに特化した神津島の集団が長く幅の狭い頭部形態を示すことを明らかにした。本土のカエル食集団では、1つの集団内に幅広い頭を有する個体と狭い個体が含まれ、多様な形態をもっていることが明らかとなった。また、同じ島嶼集団でありながら、新島の集団は幅広い頭を有する個体と狭い個体が含まれ、多様な形態をもっていることが明らかとなった。このことは、各集団のシマヘビが利用する餌メニューの多様性と対応していると考えられた。 3) 伊豆半島へのカエル類の進出年代を推定するために、アオガエル類とアカガエル類の組織サンプルを採集した。島嶼のオカダトカゲについては、その移入年代、島嶼での多様化が生じた年代を推定するための十分なサンプルを得、系統解析に入る段階まで到達した。
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