2009 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の社会的性決定-低密度条件における逆方向性転換の検証
Project/Area Number |
21570026
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
桑村 哲生 Chukyo University, 国際教養学部, 教授 (00139974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須之部 友基 東京海洋大学, 水圏科学フィールド教育研究センター, 准教授 (00250142)
坂井 陽一 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70309946)
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Keywords | 逆方向性転換 / 双方向性転換 / 雌性先熟 / 雄性先熟 / 除去実験 / 独身化実験 / 社会的地位 / 魚類 |
Research Abstract |
野外における逆方向性転換をできるだけ多くの魚種で確認するため、低密度域における配偶者除去実験と、それを実施するための予備調査を以下の調査地において実施した。 沖縄県瀬底島:一夫多妻の雌性先熟魚であるベラ科ホンソメワケベラとキンチャクダイ科アカハラヤッコの雌を除去し、複数の雄を独身化したところ、一部の雄が移動して雄どうしのペアができ、ペアの小さいほうが雌としての性行動をとることが前者で2例、後者で1例確認できた。その後ペアの一方が消失したため、受精卵の確認までには至らなかった。 沖縄県西表島:一次雄が存在するベラ科魚類の繁殖状況を調査したが、個体数が急減した種がなかったため、操作実験の開始は見送った。 千葉県館山湾:雄性先熟魚コチ科セレベスゴチの配偶システムを予備調査した。個体識別した40個体の繁殖行動を観察したところ、1例を除き、全て異なる個体どうしでペア産卵した。ペアの雌は雄より大きかったが、雌雄の体長に有意な相関は見られず、本種はランダム配偶であることが示唆された。また、一夫多妻の雌性先熟魚であるオハグロベラにおいて、雄の繁殖戦術の多様性を確認した。 鹿児島県口永良部局:一夫多妻の雌性先熟魚であるゴンベ科サラサゴンベの雌を除去したところ、独身雄とハレムが隣接する状況で、雄間の盛んな行動干渉を経て、独身雄が雌に戻る例、およびハレム雄が雌に戻る例をそれぞれ1例ずつ確認した。いずれも小さいほうが雌化した。独身雄どうしの隣接状況では互いの行動干渉が稀なまま性転換に至らなかったことから、本種においては「独身雄とハレムの隣接」という条件が逆方向性転換を誘発しやすいことが示唆された。また、一夫多妻の雌性先熟魚であるトラギス科ワヌケトラギスでは、性転換を誘発させる野外ケージ実験を予備的に実施した。
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