2009 Fiscal Year Annual Research Report
岩礁潮下帯での藻場形成における波浪による撹乱と微小藻類によるファシリテーション
Project/Area Number |
21570030
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
川俣 茂 Fisheries Research Agency, 水産工学研究所, チーム長 (50372066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 大祐 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所, 主任研究員 (30371800)
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Keywords | 海藻 / 藻場 / ウニの磯焼け / ファシリテーション / 波浪 / 物理的撹乱 / ウニの摂食 |
Research Abstract |
キタムラサキウニが優占する岩礁潮下帯では大型褐藻アラメ場を維持する機構として波動流によるウニの摂餌制限は重要である。しかし藻場内での波動流はしばしばウニの侵入限界より低下し、さらにアラメを摂食する藻食性巻貝類が藻場内に高密度に生息することから、藻場内外に分布する小型・微小藻類マットがウニの付着を阻害して侵入限界流速を低下させたり(じゅうたん効果)、巻貝の摂餌圧を吸収したりする作用も重要であることが予想されていた。本研究では水槽実験と野外調査によって藻類マットの重要性を定量的に明らかにする。 本年度は振動流水槽において、珪藻類を30×30cmの塩ビ板に一様に着生させた処理区と着生させない対照区を設けて、各実験区の中心にアラメ幼体を設置し、振動流(流速振幅4水準:0.1、0.2、0.3、0.4m/s)の条件下でキタムラサキウニのアラメ摂食量と行動を繰り返し(n=8)のある2要因被験者間計画で調べた。その結果、その摂食量は、対照区では流速振幅の増加に伴い増加して(餌の存在がにおいの拡散により感知しやすくなる効果による)0.3m/sで最大になったが、処理区では低水準を維持し、0.3m/sでは対照区に比べて有意に低下した。この低下は、ウニの基質からの剥離が0.2と0.3m/sのとき処理区で多く生じたことから藻類マットのじゅうたん効果によることが確かめられた。 またウニの磯焼け域となっている宮城県沿岸で植生の異なる4つの暗礁(アラメ群落が維持される暗礁、単年生ワカメやアラメ幼体のみが限られた時期に着生する暗礁およびアラメが全く着生しない暗礁2箇所)を7月と12月に調べ、アラメ群落が維持される暗礁では藻食性巻貝が最も高い密度(コシダガガンガラ20個/0.25m^2)で出現するが、ウニは侵入しないこと、およびイソイワタケ等の小型海藻による被度が高かったことを確認した。
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