2010 Fiscal Year Annual Research Report
岩礁潮下帯での藻場形成における波浪による撹乱と微小藻類によるファシリテーション
Project/Area Number |
21570030
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
川俣 茂 独立行政法人水産総合研究センター, 水産工学研究所, 主幹研究員 (50372066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 大祐 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所, 主任研究員 (30371800)
足立 久美子 独立行政法人水産総合研究センター, 経営企画部評価企画課, 評価コーディネーター (60414158)
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Keywords | 海藻 / 藻場 / ウニの磯焼け / ファシリテーション / 波浪 / 物理的撹乱 / ウニの摂食 |
Research Abstract |
宮城県沿岸では、広大な岩礁がキタムラサキウニの過剰な摂食によって大型海藻が生育できない不毛な場(磯焼け場)になっているが、比較的波当たりの強い所に多年生大型褐藻アラメが局所的に群落を維持する場があり、波動流によるウニの摂餌活動の抑制がアラメ場を維持する重要なメカニズムになっていると考えられている。本研究では、アラメの生残を可能にする流動条件を定量的に明らかにするため、頂部での植生が異なる4つの暗礁(K1:アラメ群落が維持、K2:ワカメやアラメ幼体が季節的に生育、B1とB2:コンブ目海藻はほとんど生育しない)を対象にして2009~2010年、頂部(干出する場合は、側面の潮下帯最上部)での波動流速を、沖側近傍の参照点での波高と潮位観測値から推定するための経験式を構築し、1.5年間の有義流速の確率分布を推定した。ウニの摂餌活動は従来の研究によって振動流速0.4m/sで停止することが明らかになっている。本研究の結果、ウニの摂餌が可能と予想される流動条件(有義流速<0.4m/s)の確率は、ウニが比較的高い密度(1~2個/0.25m^2)で侵入したB1とB2の頂部で比較的高かった(0.38と0.34)のに対して、ウニがほとんど侵入しなかった(<0.3個/0.25m^2)K1とK2では低かった。しかし、ウニがほとんど侵入しなかったK2では、アラメは幼体のみしか着生せず、流動が強すぎれば、逆にアラメの生残を制限すると考えられた。K2よりも流動が弱かったK1の頂部では、アラメ以外の葉状藻がほとんど消失した時期(秋~初冬)でも殻状藻イソイワタケが特異的に高い被度で残存した。ウニの付着力測定により、その付着力はイソイワタケ上で有意に低下することが示された。以上から、ウニの侵入がK1頂部での適度に強い流動とイソイワタケの被覆によって抑制され、アラメ群落の維持を可能にしていると考えられた。
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