2010 Fiscal Year Annual Research Report
試験管内再構成系を用いたシアノバクテリア概日時計の温度補償機構の解明
Project/Area Number |
21570037
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大川 妙子 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特任講師 (30432230)
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Keywords | 概日リズム / 酵素反応 / 環境応答 / 再構成系 |
Research Abstract |
シアノバクテリアの概日時計は、KaiA、KaiB、KaiCとATPを混合することによって試験管内で再構成できる。KaiCは自己リン酸化および自己脱リン酸化活性を持ち、そのリン酸化状態が概日振動する。このリズムの周期は温度の変化に対して補償されている。平成21年度までに、自己脱リン酸化反応はATPを中間体とする2段階の反応であることを示唆するデータが得られていたが、今年度はこのモデルが支持されるかどうかの検証を試みた。そのためにまずより精度の高いデータが得られるよう、条件の最適化を行った。次に非線形回帰分析によりデータにモデルを当てはめたところ、モデルが支持された。 またこのモデルは、自己脱リン酸化反応の1段階目は自己リン酸化の逆反応であることを意味している。この反応にはADPが必須であるため、実際にKaiCにADPが結合しているかどうかを確かめた。KaiCが自己脱リン酸化する、KaiC単独、30℃の反応条件においては、KaiC6量体あたり約3個のATPと約9個のADPが結合していた。さらにKaiC単独でゆっくりリン酸化が進む0℃の条件では、約11個のATPと約1個のADPが結合しており、30℃と比較してATPの割合が高かった。また30℃でリン酸化が進行、維持されるKaiA共存下でも、やはりKaiC単独の条件と比較してATPの割合が高かった。これらの結果は、温度やKaiA、KaiBの有無によって、KaiC結合ヌクレオチドが制御されていることを示唆する。 今後は周期の温度補償性とKaiC結合ヌクレオチドの関係や、KaiAがどのようにしてATPの割合を高めるのかについて解析し、リン酸化リズムの周期の温度補償機構を明らかにしたい。
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