2011 Fiscal Year Annual Research Report
試験管内再構成系を用いたシアノバクテリア概日時計の温度補償機構の解明
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21570037
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大川 妙子 (西脇 妙子) 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特任講師 (30432230)
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Keywords | 概日リズム / 酵素反応 / 環境応答 / 再構成系 |
Research Abstract |
シアノバクテリア概日時計蛋白質KaiCのリン酸化リズムは、KaiCをATP存在下でKaiA、KaiBと混合することにより試験管内再構成が可能である。このリズムは、概日リズムの特徴である周期の温度補償性を示す。温度補償機構を解明するためには、まずリズムを構成する素反応の機構を明らかにする必要がある。KaiCは6量体型のATPaseであり、ATPase活性に加えて自己リン酸化活性、自己脱リン酸化活性を持つ。Kaicはプロテインホスファターゼとは全く起源が異なるにもかかわらず、なぜ自己脱リン酸化活性を持つのかは不明であった。平成23年度は、Kaicの自己脱リン酸化が一般的なプロテインホスファターゼとは異なる新規の機構であることを論文にまとめた。Kaicを^<32>Pで放射性ラベルし、30℃で自己脱リン酸化反応を追跡したところ、最終産物である無機リン酸(^<32>Pi)の増加に先だって、一過的な[^<32>P]ATPの増加が観察された。速度論的解析により、Kaicの自己脱リン酸化は自己リン酸化の逆反応に続いて反応中間体ATPの加水分解反応が起こる新規の連続反応であることが明らかとなった。リン酸化の逆反応はADP要求性であるが、これまでKaiCへのADPの結合は報告されていない。そこで30℃におけるKaiC結合ヌクレオチドの経時変化を観察した。Kaicには6量体あたり12個のヌクレオチドが結合しており、反応前にはその約90%がATPであったが、4時間後には約70%をADPが占めていた。この反応機構から、Kaicリン酸化リズムは1段階目の反応の平衡点が日周変動することにより生じること、Kaic結合ヌクレオチドが重要な役割を担っていることが予想される。Kaic結合ヌクレオチドの温度による影響を確かめるため、0℃で結合ヌクレオチドの経時変化を観察したところ、ADPの増加は非常にゆるやかであり、24時間後でもADPの割合は約30%であった。KaiCにおいては、温度の上昇に伴ってADPの割合が上昇し、温度による自己リン酸化/脱リン酸化の速度定数の変化と結合ヌクレオチドの変化の相乗効果によりリン酸化リズムの周期が温度補償されるものと考えられる。
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Research Products
(3 results)