2011 Fiscal Year Annual Research Report
クロロフィルdによる光合成光化学系2電荷分離のメカニズムの新規性と普遍性の解明
Project/Area Number |
21570038
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鞆 達也 東京理科大学, 理学部, 准教授 (60300886)
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Keywords | 光合成 / 光化学系 / クロロフィル / シアノバクテリア / 酸化還元電位 |
Research Abstract |
クロロフィルdは近赤外領域に吸収極大を持つクロロフィルであり、クロロフィルa以外に反応中心クロロフィルとして機能する唯一のクロロフィルである。クロロフィルdが反応中心として機能するということは、電荷分離の際の基底状態と励起状態のエネルギー差がクロロフィルaより小さいことを意味し、酸化側の水分解系と還元側の電荷分離後の電子伝達系のエナジェテイクスの制御が必要になることを意味する。我々は2010年に光化学系II複合体の初期電子受容体の酸化還元電位がクロロフィルaとクロロフィルdの差に相当する分、ポジティブシフトしていることを見いだしているが、本年度の研究において、光化学系II複合体の第二次電子供与体の酸化還元電位も同様にポジティブシフトしていることが観測された(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)。このことは、光化学系II複合体において初期電子受容体と第二次電子受容体の電位差も効率の良い電子伝達反応に必須であることを意味している。クロロフィルdという新規色素を用いて解析した本研究により、光合成の水分解反応において、変えてよいもの(還元側の酸化還元電位)、変えてはいけないもの(酸化側の酸化還元電位、初期電子受容体と第二次電子受容体のエネルギー差)が明らかになった。また、光化学系Iにおいても酸化側の電位が可視を吸収するクロロフィルaと保存されているため光合成の電荷分離反応において酸化側の電位が非常に重要な意味をもつものと推測される。これらの結果を応用して、これまでに無い、新たな波長領域に吸収極大を持つ薪規クロロフィルを用いての水分解型光合成反応が今後可能になると考えられる。これは、新たな光を用いての人工光合成にも応用可能で有り、本年度はその緒としてクロロフィルa型の光化学系IIを金粒子に結合させて酸素発生を可能にしたことを報告した。
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Research Products
(24 results)