2011 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルジェネティクスによるシロイヌナズナの葉の極性確立の分子機構の解明
Project/Area Number |
21570052
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
町田 千代子 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70314060)
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Keywords | 細胞分子機能 / ケミカルジェネティクス / 発生・分化 / 遺伝子 / 低分子化合物 |
Research Abstract |
葉は、茎頂メリステムから分化する地上部の器官であり、基部-先端部軸、中央-側方軸、裏-表軸という軸性を持つ。我々は、これまでに、シロイヌナズナのAS1/AS2遺伝子が、葉の裏側化因子と茎頂メリステム維持遺伝子の発現を抑制することによって、これらの3つの軸に沿った形態形成に関わっていることを明らかにしてきた。また、AS1/AS2遺伝子と共に葉の軸性の決定に関わっている新奇な因子が多数報告されてきたものの、その作用機作は全く不明であった。そこで我々は、AS1/AS2遺伝子の変異体にケミカルジェネティクスを適用して、統一的な作用機作を明らかにすることを目的とした。これまでに、as1とas2変異体にアルカロイド化合物であるベルベリンやカンプトテシン、DNA損傷試薬等を添加すると、葉の裏側化が著しく亢進することを明らかにした。(1)ベルベリンを投与した時の葉の形成に関わる遺伝子の発現解析を行った。その結果、茎頂メリステム維持遺伝子群とETTIN等の裏側化遺伝子群の発現が上昇している事が分かった。一方、表側遺伝子群の発現レベルには特に変化は認められなかった。(2)カンプトテシンのターゲットであるトポイソメラーゼIαの遺伝子の変異体とas1/as2との二重変異体、または、as1/as2変異体にカンプトテシンやDNA損傷試薬をを投与した時の遺伝子発現解析を行ったところ、ほぼ、ベルベリンと同じ結果が得られた。(3)特に共通に発現レベルに変化が大きかった、ETTIN遺伝子の変異とas1またはas2との二重変異体に、カンプトテシンを加えたところ、野生型に近い葉の形態を示した。以上の結果から、葉の棒状化は、主に、ETTIN遺伝子の異所的発現上昇が原因と考えられた。棒状化を引き起こすケミカルは、ETTIN遺伝子の表側における恒常的な発現抑制に必要な因子の特異的機能阻害をしている可能性が考えられた。扁平な葉の形成は、光合成機能にとっても、極めて重要であり、AS1/AS2によるETTIN遺伝子の抑制機構の分子レベルでの解析が今後重要であると考えられる。
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Research Products
(17 results)