Research Abstract |
22年度は,国際宇宙ステーション「きぼう」棟における微小重力実験により得られた試料の解析に重点を置いた.μG区と宇宙1G区いずれにおいても,種子の発芽,ロゼット葉の形成,ボルティング,開花,長角果および種子の形成が確認され,宇宙においてもシロイヌナズナが生活環を全うすることが確認された.栄養成長の段階では,ロゼット葉の枚数については実験区の間に有意な差はみられなかった. 生殖成長の過程については,短期実験の試料において,宇宙1G区と比べると,花茎長がμG区において有意に大きかったのは,ボルティングの開始が早まったためである可能性が考えられる.また開花のタイミングもμG区において早まる傾向が見られた.従って生殖成長の開始もしくは初期段階は微小重力下において早まるか,もしくは促進される可能性が示唆された.過重力環境下では花茎の成長自体が抑制されることが報告されているので(Soga et al. 1999, 2001, Tamaoki et al. 2006),成長速度についてはさらなるデータ解析が必要である. 生殖成長の後期におこる長角果形成においては,宇宙実験区内における差よりも,地上対照区と宇宙実験区内の間で顕著な差が確認された.長角果の長さが宇宙実験区で有意に低下した.しかし花の形態は実験区の間に顕著な違いは見られず,またボルティングした個体あたりの長角果数は,地上対照区と比べると宇宙実験区ではむしろ多い傾向がみられたので,花芽形成の段階までに,宇宙実験区において負の影響があったとは考えにくい.従って,宇宙実験区ではその後の過程における何らかの原因により長角果の成熟度合いが低下したと考えられる.宇宙実験区においては,実験終了後でも長角果や花茎に緑色を残した試料が地上実験区と比べると多く見られたことから,長角果の成熟が何らかの原因により遅れたため,未熟なまま収穫することになってしまった可能性がある.
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