2011 Fiscal Year Annual Research Report
海水ウナギの飲水行動を調節する脳内神経回路:ホルモン受容から食道収縮まで
Project/Area Number |
21570078
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 正昭 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (10100976)
|
Keywords | 飲水調節ホルモン / 最後野(AP1) / 脳弓下器官(SFO) / 神経活動 / 迷走神経運動核(GVC 1) / アンギオテンシン / カテコールアミン / 心房性ナトリウム利尿ペプチド |
Research Abstract |
海水ウナギの飲水行動は、血中で生じたアンギオテンシン(ANG II)によって促進され、心房からの心房性ナトリウム利尿ペプチドチド(ANP)によって抑えられる。これまでの結果から、延髄最後野(AP)のニューロンはANG IIに対して比較的安定した反応を示すことを見ている。そこで本年度はAPに焦点を絞って、このニューロンでのANG IIとANPの効果を調べた。 ウナギの脳のクモ膜を剥離した後に、正中線で縦断すると、APの矢状断面がみえる。APの前部で脳室に近い部位(AP1と命名)のニューロンはANG IIによって一過性に興奮するが、この興奮はANP前処理後には見られなくなる。この結果はラットの脳弓下器官(SFO,ANG IIの作用部位で渇きの中枢と考えられている)での結果と良く似ており、ウナギでも哺乳類のSFOと良く似たニューロンがAP1にあることを示唆している。しかし脳の正中断では、AP1ニューロンが傷ついている可能性が高く、いいニューロンに当たればきれいな結果(ユニットスパイク)が得られるが、大部分は神経活動が記録できない。 そこで今年度の後半から、クモ膜剥離のwhole brainを用いることにした。この標本だとAP1の小さい活動電位しか取れないが、ANG IIによる一過性の興奮とANPの抑制効果が高い確率で観察できるようになった。未だ1例しか取っていないが、ANG IIでAP1を刺激しながら迷走神経運動核(GVC)の神経活動をサーベイすると、obexの前部のGVCニューロン(GVC1)の活動が抑えられた。免疫組織化学的にAPニューロンはカテコールアミン合成酵素を持っており、カテコールアミンはGVCニューロンの活動を抑えるので(Ito et al., 2006)、この結果は実際にAP1からGVC1に神経連絡があることを実証したことになる。
|