2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21570080
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
黒川 信 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50211222)
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Keywords | 消化管神経系 / 腸管神経系 / 消化管運動 / ペースメーカー / 比較生理学 / 軟体動物 / アメフラシ / 棘皮動物 |
Research Abstract |
神経系の起原とも言える消化管神経系について比較生理学的に構造と機能に関する知見を蓄積し体系化するために、細胞組織化学的、薬理学的、電気生理学的に研究を進めた。消化管を研究する際は研究実施計画にあげた通り、消化管自律運動の起原(筋原性か神経原性か)を見極めることが必須である。その上でそれぞれの運動に対する消化管神経系の機能と、それと中枢神経系との相互作用、神経回路の解析を行った。軟体動物アメフラシに於いては、興味深い事に神経原性と筋原性の律動的運動が砂嚢で共存していた事から、それらに対する神経支配を一モデルとして解析した。神経原性運動のペースメーカーニューロンである後砂嚢上の末梢ニューロン活動と消化管自律運動のメカノグラムの同時記録から、末梢ニューロンで周期的なバースト活動を記録し、それに対応する神経原性運動と、神経活動に依らずに起こる筋原性運動を区別した。候補神経伝達物質であるセロトニンとFMRFamideの投与により、両者とも神経活動と神経原性の運動を抑制したが、筋原性運動に対する支配は二相性であった。中枢神経節の腹部神経節から伸びる貯精嚢神経分枝を電気刺激すると末梢ニューロンの活動及び神経原性の運動が抑制されたことから、腹部神経節から消化管神経系の神経原性ペースメーカーに対するセロトニン作動性の抑制性神経支配の存在を示した。棘皮動物ナマコではテトロドトキシン抵抗性の筋原性運動は同定出来たが、消化管全域に渡り神経原性運動は見出されなかった。一方、候補伝達物質のドーパミンによる興奮性作用はアセチルコリン作動性の運動ニューロンを介してもたらされている事を示した。これらの成果は、系統進化的に消化管神経系の機能をそれと中枢との関係を俯瞰する上で重要な基盤となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
比較生理学的に、原索動物、節足動物、軟体動物、棘皮動物の消化管神経系を網羅的に調べる事を一つの目標としているが、これまで主に軟体動物および棘皮動物について集中的に解析を進めたためこれらは順調に進展している。一方で原索動物と節足動物についてはやや遅れ気味である。原因は、軟体動物においてもアメフラシとモノアラガイを用いる中で両者の比較検討等が必要となりその他の動物を用いる実験の時間が不足した為である。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は最終年度であり、すでに主解析が終わっている動物での取りまとめとともに、解析が遅れている動物について集中的に取組み、比較生理生化学的視点での議論のための結果を得る事に努める
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