2010 Fiscal Year Annual Research Report
異なる生育環境における,同じ2種間の交雑は異なる進化生物学的結果をもたらすか?
Project/Area Number |
21570086
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (60263985)
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Keywords | 種間交雑 / SSRマーカー / イカリソウ / キバナイカリソウ |
Research Abstract |
植物では種間交雑はまれな現象ではない.種間交雑は多くの場合,交雑を起こす2種間の接触地域で起きることになるが,その環境は必ずしも同一ではなく,異なる環境になっている場合も少なくない.種間交雑がその後,どのような進化生物学的意義をもたらすかは,交雑で生じた個体の生存力に依存すると考えられるので,同じ2種間の交雑であっても異なる環境下で起きた場合には,交雑起源個体の生育に違いが生じて,異なる進化生物学的結果をもたらす可能性がある. 本年度は,東北地方の太平洋側に分布するイカリソウと日本海側に分布するイカリソウについて,遺伝子流動のパターンを葉緑体遺伝子マーカーと核遺伝子マーカーを用いて,解析を行った.その結果,形態的にはイカリソウの典型的なパターンを示す集団においても,キバナイカリソウの葉緑体DNAマーカーが固定されている一方,核遺伝子マーカーはほぼ形態的特徴と平行的なパターンを示した.このことは,もともとキバナイカリソウの分布域であった場所に,イカリソウの遺伝子が浸透していっている可能性を示唆する.しかしながら,交配様式の観点からは,イカリソウとキバナイカリソウの間には顕著な違いが認められず,このような遺伝子浸透のパターンがどのように生じたのかは明らかに出来なかった.交配様式以外の生態的要因についても検討する必要があると考えられる. さらに,フナバラソウ・イヨカズラの交雑集団,テンニンソウとミカエリソウの交雑集団の解析を行うために,種特異的マーカーの探索および予備的な野外調査を行った.
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