2011 Fiscal Year Annual Research Report
異なる生育環境における,同じ2種間の交雑は異なる進化生物学的結果をもたらすか?
Project/Area Number |
21570086
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (60263985)
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Keywords | 種間交雑 / 葉緑体DNA変異 / 核ITS領域変 / 種間交雑 |
Research Abstract |
植物では種間交雑はまれな現象ではない.種間交雑は多くの場合,交雑を起こす2種間の接触地域で起きることになるが,その環境は必ずしも同一ではなく,異なる環境になっている場合も少なくない.種間交雑がその後,どのような進化生物学的意義をもたらすかは,交雑で生じた個体の生存力に依存すると考えられるので,同じ2種間の交雑であっても異なる環境下で起きた場合には,交雑起源個体の生育に違いが生じて,異なる進化生物学的結果をもたらす可能性がある. 本年度は,シソ科のテンニンソウとミカエリソウを対象に,交雑が野外でどのように起きているかを形態計測のデータと葉緑体DNAの遺伝子間領域および核ITS領域の変異データに基づき,解析を行った. これら2種間では,中部地方の広範囲にわたって交雑を起こしているが,交雑の起こり方はさまざまなパターンが見られた.ほぼ完全に交雑が起きていて,2種間の変異を広く示す個体からなる集団から,ごくわずかに交雑が生じており,2種間でわずかに遺伝子の浸透が見られた集団も存在した.これらの違いは,母種の分布域の違いに大きく起因するものと考えられたが,必ずしも分布域から予測されている通りになっていない場合もある.葉緑体DNAの変異と核ITS領域の変異を考え合わせると,花粉による遺伝子流動が集団間で広く起きていることによる可能性がある.形態の変異と遺伝子による変異には完全ではないものの概ね相関があることがわかった.
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