2011 Fiscal Year Annual Research Report
汽水性稀少カニ類は遺伝的・生態的特性に顕著な地域固有性をもつか?
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21570095
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
和田 恵次 奈良女子大学, 共生科学研究センター, 教授 (80127159)
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Keywords | 生物多様性 / 分類 / 集団 / 遺伝的構造 / 生態的特性 |
Research Abstract |
日本の沿岸に飛び石的に分布する汽水域固有の稀少カニ類について、集団間の遺伝的特徴と生態的特徴の変異を明らかにすることを目的として研究を遂行し、本年度は以下の成果を得た。 1.ムツハアリアケガニ科のアリアケモドキについて、これまで得られたデータを解析し、遺伝的に大きく3つのグループ(太平洋沿岸域、北海道・北部九州・瀬戸内海、南西諸島)に分かれることを明確にした。繁殖期は、太平洋沿岸のグループが温暖期にあるのに対し、残り2つのグループは寒冷期にあるという特徴をもつことも明らかとなった。これらの成果を論文としてまとめ、学会誌に発表した。 2.ムツハアリアケガニ科の希少種クマノエミオスジガニいついて、宮崎県熊野江川の集団と三重県宮川の集団が、遺伝的にまったく独立していることを明確にし、併せて繁殖期は同じ季節にあることを明確にした。これらの成果を論文としてまとめ、学会誌に発表した。 3.ヒメヤマトオサガニについて、遺伝的特性の解析の地点数を増やし、かつ解析対象とする遺伝子の領域も増やして、西南日本の地域集団間の遺伝的類縁関係を構築させた。その結果、日本本土(和歌山、高知、鹿児島)の集団と南西諸島(奄美大島、沖縄島、西表島)の集団間で大きな遺伝的相違が認められ、それは繁殖期が夏期にあるか冬期にあるかという違いとも連関していることが明らかとなった。 4.イワガニ上科のタイワンヒライドモドキについて、西南日本の地域集団間での遺伝的変異を解析したところ、ヒメヤマトオサガニと同じように、本土の集団と南西諸島の集団の間に、遺伝的障壁を見出すことができた。ただし、日本海にある対馬の集団は、本土と南西諸島のいずれとも異なる遺伝的特徴をもつという興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の交付申請書に記述された研究実施計画の3つの項目すべてにおいて、計画通り実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒメヤマトオサガニのデータはまとめて論文化する。タイワンヒライソモドキのデータは、解析を少し増やしてから、論文化を試みる。さらにコメツキガニ科のチゴガニについて、既往の情報に加えて、日本海の集団の遺伝的特徴と行動的特徴を明らかにする計画である。最後に本研究課題のまとめを報告書に整理する。
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Research Products
(5 results)