2009 Fiscal Year Annual Research Report
カワトンボ類の交尾器の左右非対称性:その機能と進化パターン
Project/Area Number |
21570099
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 文男 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 助教 (40212154)
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Keywords | 進化 / 精子競争 / 配偶行動 |
Research Abstract |
カワトンボ,オオカワトンボ,クロイワカワトンボ,アオハダトンボ,ミヤマカワトンボ,バグロトンボ,リュウキュウハグロトンボの7種に関して,未熟個体と成熟個体のオス交尾器の形態を詳細に比較した.カワトンボ,オオカワトンボ,クロイワカワトンボでは交尾器の形態は左右対称であったが,アオハダトンボではやや左右非対称,ミヤマカワトンボ,バグロトンボ,リュウキュウハグロトンボでは著しく左右非対称であった.非対称性は成熟個体で顕著になる傾向が認められた.ミヤマカワトンボとバグロトンボでは,実際に交尾器の側突起の切除を行うと,左側を切除したとぎにメスの受精嚢内の精子をまったく掻き出せなくなった.つまり,左側がよく発達して機能的であることがわかる.メスの受精嚢は上記の順でよく発達していた.メスの受精嚢の発達具合(より奥に精子を貯える)とオス交尾器の左右非対称性の程度には強い相関があった.より奥の精子を掻き出すためには,左右非対称な交尾器が必要であると考えられる.外国産の種について,中国のMnais属の1種,メキシコのHetaerina属の1種についてオス交尾器とメス受精嚢の形態を観察することができた.前者はメスの受精嚢が複雑な構造となっていたが,オスの交尾器は左右対称,後者はメスの受精嚢が単純でかつオスの交尾器も左右対称であった.その他のカワトンボ類の多くの種のDNA解析も行い系統樹を描いた結果,左右対称なものから左右非対称なものが少なくとも2回出現している可能性があった.しかし,それを確かめるためには,今後さらに多くの(とくにアメリカ産の)種に基づく比較が必要である.
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Research Products
(1 results)