2011 Fiscal Year Annual Research Report
カワトンボ類の交尾器の左右非対称性:その機能と進化パターン
Project/Area Number |
21570099
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 文男 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (40212154)
|
Keywords | 進化 / 精子競争 / 配偶行動 |
Research Abstract |
カワトンボ科のオスの交尾器の左右非対称性の進化パターンを明らかにするために、本年度は、ベトナム産Neurobasis chinensisおよび中国産Caliphaea sp.について、オスの交尾器の左右非対称性の程度とメスの精子貯蔵特性を調査した。その結果、昨年度までに得られた日本産および中国、北アメリカ、メキシコ産のカワトンボ類と同じように、メスがより奥に存在する受精嚢に多くの精子を貯えるほど、オスの交尾器の左右非対称性が増大する傾向が認められた。カワトンボ科全体の系統樹をDNAの塩基配列から描き、その上で左右非対称性のパターンを見ると、左右対称な交尾器が祖先形であり、左右非対称性は1回だけの起源に基づくことが明らかになった。そのグループの中で、非対称性の種ごとの程度の差は(やや非対称な種から顕著に非対称な種まで)、メスの精子の貯蔵様式と関連することになる。メスは、Y字状の受精嚢内に精子を貯えるが(メスは全種で左右対称)、オスにとっては、右側の受精嚢内の精子は掻き出せないが,左側の受精嚢を掻き出せるように左右非対称になっていた。この場合、もし、左右対称であれば、どちらの受精嚢内の精子もオスは掻き出すことができないため、片方でも掻き出せる方の繁殖成功度が高くなると予想される。オスの交尾器の変化は,雌雄の拮抗的共進化としてとらえることができる。つまり、メスは精子を掻き出されないようにより奥へ精子を貯蔵し、オスはできる限り多くの精子を掻き出せるように非対称性を獲得したという考え方である。これについては、今後の実験的証明が必要である。また、調べた限りにおいて、左右非対称性種では、常に左側が発達していた。逆のパターンがないのかどうか、さらに広範な調査が期待される。
|
Research Products
(1 results)