2010 Fiscal Year Annual Research Report
寄生線虫アニサキス・シンプレックス同胞種間における形態的,遺伝的差異について
Project/Area Number |
21570106
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
倉持 利明 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (80277590)
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Keywords | 寄生線虫 / Anisakis simples / 形態発現 / 種分化 / 分子分類 |
Research Abstract |
鯨類寄生線虫Anisakis simplesには遺伝的変異に基づく同胞種が知られており,一方,本種虫体を培養液中で成熟させて得られた雄成虫が2つの同胞種,A.simplex sensu strictoとA.pegreffiiの間で形態が異なるという研究結果が示されている.本研究では,それら形態的差異に基づく同胞種の同定が,宿主体内から得られた虫体で可能であるかどうかを検討するために評画された 22年度には引き続き,オホーツク海及び西部北太平洋産のミンククジラ,南極海産クロミンククジラ,鹿児島県に漂着したタイヘイヨウアカボウモドキからそれぞれ得られた虫体について,雄成虫個体について形態観察,計測を行い,その後に遺伝子解析を行った.形態観察,特に肛門後乳頭の配列において,海域を問わず最も卓越したのはA.pegreffii型とされるもので,これに次いでA.pegreffiiとA.simplex sensu strictoの双方の特徴をそれぞれ左右に発現したものがみられ,A.simplex sensu stricto型を示すものはわずかであった.一方,遺伝子解析の結果は,北半球ではA.simplex sensu strictoが圧倒的に多く,南極海ではA.pegreffiiのみであることを示し,宿主体内から得られた虫体においては,形態的な差異を以て同胞種を同定するのは困難である可能性が示唆された。しかし,培養液虫で得られる成虫は,これまでの解析で用いた虫体と比べるとはるかに体長が小さいため,今後は同様に宿主体内から得られた虫体の中でも,成熟初期の小型個体を用いて同様の解析する必要がある
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Research Products
(2 results)