2010 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌におけるジアシルグリセロールの生理的意義の解明
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21570110
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
西山 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (80291334)
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Keywords | 大腸菌 / ジアシルグリセロール / タンパク質膜挿入 / 自発的膜挿入 / MPIase / 機能的膜タンパク質合成 / 再構成 / SecG |
Research Abstract |
大腸菌において、膜内在性タンパク質はいくつかの経路を経て膜挿入することが知られているが、シグナル認識粒子(SRP)や膜透過装置(Sec因子)に依存しない経路は、リン脂質のみからなるリポソームにも膜挿入することから、自発的に膜挿入すると考えられてきた。しかし、申請者らはこの自発的膜挿入反応は、リポソームに生理的濃度のジアシルグリセロール(DAG)が欠如するために起こること、実際の膜挿入は複合糖脂質HPIaseに依存して起こることをin vitro実験系を用いて証明した。DAGは実際にin vivoでも自発的膜挿入の抑制に関与することを証明するため、DAG枯渇株を構築し、その株における膜挿入反応を解析することを試みている。大腸菌におけるDAG生合成経路はほとんど不明であり、数種の遺伝子の関与が考えられているのみであった。これらの遺伝子の多重変異、および大量発現株を構築したが、DAGの発現レベルは全く変化せず、DAG発現レベルが厳密に制御されていることを強く示唆している。現在も多重変異株の構築を続行している。一方、膜挿入に必須の因子MPIaseの一次構造が完全に決定された。その結果、3糖による14回の繰り返し配列を持ち、末端のDAG構造とピロリン酸で結合していることが明らかとなった。また、すべての糖部分にN-アセチル基、一部にアセチル基をもち、これら多くのアセチル基が膜タンパク質の疎水的な領域との相互作用に重要であることが示唆された。酵素的にDAG部分を除去した可溶性MPIaseは膜タンパク質と可溶性複合体を形成し、さらに膜挿入能を保持していることが明らかとなった。これらの結果は、DAGによる膜挿入抑制とMPIaseによる膜挿入促進は独立に作用していると考えられる。
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