2010 Fiscal Year Annual Research Report
個々のMMP活性を選択的に制御する高特異性インヒビターの開発
Project/Area Number |
21570118
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
東 昌市 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (10275076)
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Keywords | マトリックスメタロプロテアーゼ / MMP-7 / コレステロール硫酸 / laminin-332 / fibronectin / 基質特異性変化 / 細胞表層プロテオリシス / 癌の浸潤・転移 |
Research Abstract |
プロテアーゼを細胞膜表層に局在させることは、細胞膜タンパク質の分解やプロセッシングを効率化するだけでなく、近傍の細胞外タンパク質を限定的に分解する上でも極めて有効である。私達は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の一つであるMMP-7(matrilysin)が癌細胞膜表層のコレステロール硫酸(CS)に結合し、特異的膜タンパク質を切断することで、癌の転移能を増強することを見出してきた。今回、CSとの相互作用がMMP-7の細胞外マトリックスタンパク質分解活性に及ぼす効果について調べた。その結果、MMP-7単独では基底膜構成成分の一つであるlaminin-332を殆ど分解しないのに対し、CS存在下ではその分解が著しく促進されることを見出した。反対に、MMP-7によるカゼインの分解はCSの存在下、顕著に阻害された。一方、MMP-7によるfibronectinの分解は、低濃度のCS存在下では部分的に阻害されたものの、高濃度のCS存在下では有意に促進されることが判明し、CSによってMMP-7の基質特異性が変化することが示唆された。さらに、この基質特異性変化のメカニズムについて調べたところ、CS存在下でMMP-7による分解が促進される基質タンパク質は全てCSに対し親和性を持つことが明らかになった。したがって、CSはMMP-7とその基質タンパク質の両方に結合することで、これらを架橋し、酵素反応を促進することが予想された。これに対し、CSがMMP-7側のみに結合すると、その基質認識部位が影響を受け、酵素反応におけるKm値が増大することで反応速度が低下することが明らかになった。一方、CSを介して細胞膜に結合したMMP-7は溶液中およびプラスチックプレートにコートしたlaminin-332やfibronectinを分解することが判明し、これら細胞接着タンパク質の分解に伴った細胞の脱着が観察された。以上の結果から、細胞表層のCSに結合したMMP-7は近傍の細胞接着タンパク質を選択的に分解しつつ、癌細胞の移動を促進する可能性が考えられた。
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