2011 Fiscal Year Annual Research Report
個々のMMP活性を選択的に制御する高特異性インヒビターの開発
Project/Area Number |
21570118
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
東 昌市 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (10275076)
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Keywords | マトリックスメタロプロテアーゼ / MMP-2 / β-アミロイド前駆体タンパク質 / MMPインヒビター / タンパク質結晶構造解析 / 酵素活性阻害機構 / 高選択性阻害剤 / がんの浸潤・転移 |
Research Abstract |
悪性のがん組織では、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)が、がん細胞の浸潤・転移に寄与している。しかしながら、ヒトで見出されている24種のMMPsの全てが、がんの浸潤・転移を促進するわけではなく、特異性の低い阻害剤によって標的以外のMMPsが阻害されると様々な副作用が現れることが示唆されている。事実、現在までに開発された多くのMMPsインヒビターはいずれも特異性が低く、臨床試験の過程で確認された様々な副作用が原因となり、がん治療薬としての利用に至っていない。 MMP-2は、がんの浸潤・転移に対し促進的に作用することが示唆されており、がん治療の良好なターゲット分子である。私達は、β-アミロイド前駆体タンパク質(APP)がMMP-2に高い選択性を持つインヒビター領域を持ち、その領域がAPP分子内のISYGNDALMP配列(APP-IPと命名)に局在することを見出した。本年度は、APP-IPとMMP-2触媒ドメインとの複合体の結晶構造解析を行うことにより、この二分子間の結合様式を明らかにした。その結果、APP-IPはそのNH_2末端からCOOH末端への方向が基質ペプチドとは逆向きになるようにMMP-2の基質結合クレフトに結合し、APP-IPのAsp^6のカルボキシル基がMMP-2活性中心のZn^<2+>に配位結合していた。また、APP-IPのAla^7-Pro^<10>とTyr^3-Ile^1部分がそれぞれ、MMP-2基質結合クレフト内のS2-S5および、S1'-S3'部位と相互作用しており、これらの広域にわたる相互作用が高いMMP-2選択性に深く関わることが予想された。すなわち、基質結合クレフト内の活性中心近傍の構造はMMPs間で酷似しているものの、このクレフト全体の構造はそれぞれのMMP間で異なるため、クレフト全体と相互作用するAPP-IPが酵素選択性を発揮できるのではないかと推察した。この酵素阻害様式の解明は個々のMMPに対して高い特異性を持つ阻害剤の設計・開発に重要な手がかりを与えるものと考える。
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Research Products
(9 results)