2009 Fiscal Year Annual Research Report
ピリドキサール・キノン酵素反応の多元的エネルギー解析
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21570120
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
林 秀行 Osaka Medical College, 医学部, 教授 (00183913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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Keywords | プロトン移動 / ピリドキサール酵素 / キノン酵素 / 反応機構 / エネルギー進位 / セリンパルミトイル転移酵素 / 銅アミン酸化酵素 / 立体化学 |
Research Abstract |
ピリドキサール酵素のセリンパルミトイル転移酵素(SPT)の詳細な反応機構の解析を行った。SPTは第一の基質L-セリンのみを結合した状態ではα-プロトンは脱離せず,第二の基質パルミトイルCoAが結合して初めてα-脱プロトン化が起こる。そのためにL-セリンのアミノ基転移などの副反応が抑えられている。この制御が補酵素ピリドキサールリン酸(PLP)とL-セリンのシッフ塩基の二面角の制御によって立体化学的に行われていることが示され,通常の反応座標に反応中間体の二面角の座標を導入するという多元的なエネルギー解析によってSPTの反応制御機構を説明することができた。また,このエネルギーランドスケープを形作る構造的基盤としてHis159が中心的な役割を果たしていることを明確に示すことができた。即ち,His159はPLP-L-セリンシッフ塩基のL-セリン由来カルボキシル基と水素結合することにより,同シッフ塩基のN-Cα結合の二面角をα-脱プロトン化に不利な角度に保っているが,パルミトイルCoAが結合するとそのカルボニル基が代わりにHis159に結合し,カルボキシル基がArg390と結合するようになり,上記の二面角が変わってCα-Hがシッフ塩基とPLPピリジン環の平面に垂直となって脱プロトン化が進行するわけである。このHis残基はピリドキサール酵素の中でもSPTと類縁の酵素群にのみ保存されており,その意義がこの解析によって初めて明確に示された。 SPTと同様に多元的エネルギー解析の手法を用いてキノン酵素の銅アミン酸化酵素(AGAO)のプロトン移動過程を解析するため,第一段階として広いpH領域での遷移相速度論的解析を行い,次年度の詳細な解析のための基礎データを収集した。
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