2010 Fiscal Year Annual Research Report
チロシル及びトリプトファニルtRNA合成酵素の新規生理機能の探索
Project/Area Number |
21570129
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若杉 桂輔 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20322167)
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Keywords | 蛋白質 / 酵素 / 新規機能 / 血管新生 / 制御機構 |
Research Abstract |
トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)は、tRNAにトリプトファン(Trp)を結合させる反応(アミノアシル化反応)を触媒する酵素である。ヒトのTrpRSには、下等真核生物から保存されている触媒活性ドメインのN末端側に、触媒活性には関係のない高等真核生物特有な付加ドメインを有している。以前、私は、ヒトTrpRSのこの付加ドメインが蛋白質分解酵素により切断された後、触媒活性ドメインが血管新生抑制因子として働くことを発見した。本プロジェクトでは、種々の生物種由来のTrpRSに血管新生を抑制する活性があるかどうか検証することを目指している。ヒト、ウシ、マウス、ゼブラフィッシュ、シロイヌナズナ由来のTrpRSを大腸菌で発現させ、種々のカラムを用いて精製した。今回、ヒトTrpRS同様にN末端側に付加ドメインが存在するウシTrpRSにおいても、蛋白質分解酵素により付加ドメインが切断され、触媒活性ドメインが産生されることを明らかにした。現在、種々の生物種のTrpRSを用いて血管新生抑制能の測定を行っているところである。今後、相互に比較解析することにより、血管新生抑制能を獲得したTrpRSの分子進化過程の解明を目指す予定である。さらに、マウス胚性幹細胞(ES細胞)内ではalternative splicingによりTrpRSのC末端側に6アミノ酸が付加されることが報告されている。今回、RT-PCRによって解析した結果、このalternative splicingがマウスES細胞特異的な現象であることを実証することに成功した。現在、6アミノ酸を付与されたTrpRSと通常のTrpRSとの構造や機能面での違いについて解析を行っている。
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