2011 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴシン1リン酸輸送体の同定とその多様性の解明
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21570137
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西 毅 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60403002)
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Keywords | 輸送体 / スフィンゴシン1リン酸 / 赤血球 / ATP / 細胞遊走 / 細胞膜 |
Research Abstract |
本年度も引き続きスフィンゴシン1リン酸輸送体の生理的役割を明らかにすべく、昨年度までにゼブラフィッシュの心臓の発生に必須なS1P輸送体機能するS1P輸送体Spns2が哺乳類においても相同遺伝子を持ち、ヒト及びマウスSPNS2は細胞に発現させることでS1P放出活性を持つことを明らかにした。しかしそれ以外の2種類の相同体の遺伝子は細胞膜に局在しないためS1Pを細胞外へ放出する輸送体として機能しなかった。本年度はまず我々の見いだしたスフィンゴシン1リン酸輸送体であるSPNS2のマウス個体での生理的役割を明らかにすべく、SPNS2遺伝子欠損マウスの解析を進めた。SPNS2遺伝子欠損マウスでは血漿中のS1P濃度が半分程度にまで減少していた。SPNS2の組織分布を調べたところ血管内皮細胞に局在することがわかり、SPNS2の機能が欠損することで血管内皮細胞からのS1Pの放出が完全に無くなっていた。また、このマウスでは血中へのリンパ球の遊走が完全に阻害されており、S1Pの輸送体であるSPNS2の機能がリンパ球の遊走に関わるS1Pの供給にあることが明らかとなった。このことはこれまで血液中のS1Pの主要な供給源であると考えられていた赤血球ではなく、リンパ球などが血管内に出てこようとする部位に存在する血管内皮細胞の局所的なS1P供給がリンパ球の血液中への移行を調節していることを示しており、この輸送体を標的とした副作用の少ない免疫抑制剤の開発の可能性を示唆している。一方、スフィンゴシン1リン酸輸送体の多様性解明のため赤血球、及び血小板における輸送体分子の同定を酵素化学的な手法と特異的なラベリングによって進めたが、これまでに単独でスフィンゴシン1リン酸を細胞へ放出する新しい輸送体を同定するに至っていない。また、SPNS2のホモログについても、外部からの刺激などを含めスフィンゴシン1リン酸の細胞外への輸送への関与を見いだすことはできなかった。これらのSPNS2ホモログは細胞内でのスフィンゴ脂質の代謝などに関与していると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに同定したスフィンゴシン1リン酸輸送体の機能解析とその相同遺伝子の機能解析は比較的順調に進んでいる。一方、赤血球膜に存在する輸送体の同定に関しては、当初の計画に基づきS1P分子と特異的に反応する蛋白質のラベリングに成功し、質量分析によって同定した輸送体分子のSIP輸送活性を測定したが、目的の輸送体で無く、未だ同定に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り、スフィンゴシン1リン酸輸送体の生理機能の解析をノックアウトマウスを用いて進めると共に、未だ明らかとなっていない血球系のスフィンゴシン1リン酸輸送体の同定を進める。
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