2009 Fiscal Year Annual Research Report
脂質メディエーターによる脂肪細胞分化制御の分子基盤
Project/Area Number |
21570151
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
藤森 功 Osaka University of Pharmaceutical Sciences, 薬学部, 講師 (70425453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有竹 浩介 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (70390804)
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Keywords | 脂肪細胞 / 脂質メディエーター / プロスタグランジン / 肥満 |
Research Abstract |
マウス前駆脂肪細胞(3T3-L1細胞)を0日(未分化)から8日目まで分化させ、培地中に産生される脂質メディエーター(PGD_2、PGE_2、PGF_<2α>)の定量を行い、PGE_2とPGF_<2α>は脂肪細胞の分化前期に一過的に産生され、一方、PGD_2は分化の中期から後期にかけて産生していること分かった。 次に、脂肪細胞におけるPGF_<2α>合成酵素の単離・同定を行った。aldo-keto reductaseファミリーに注目し、それぞれの遺伝子に対する特異的siRNAによりノックダウン実験を行った。その結果、AKR1B3の遺伝子発現をsiRNAにより抑制したとき、PGF_<2α>の産生量は低下したことから、AKR1B3が脂肪細胞においてPGF_<2α>を合成する酵素であることを同定した。AKR1B3は脂肪細胞の分化初期に一過的に発現上昇し、さらにその上流酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2の発現も分化初期において一過的に上昇し、PGF_<2α>の産生量とよく一致していた。FP受容体のアゴニストであるFrupostenolを脂肪細胞の培養液中に添加すると細胞内の脂肪滴の蓄積量は有意に低下し、また脂肪細胞の分化時に特異的に発現上昇する遺伝子である、核内受容体のPPARγとその標的遺伝子であるaP2やStearoyl-CoA desaturase遺伝子の発現も抑制された。一方、同時にFP受容体のアンタゴニストであるAL-8810を添加すると、Fruprostenolによる脂肪細胞の分化抑制は解除された。 FP受容体を介した脂肪細胞分化抑制機構を解析したところ、MAPキナーゼとホスファチジルイノシトール-3-リン酸キナーゼ経路を活性化し、COX-2の発現を上昇させ、PGF_<2α>の産生量を増強する新たな制御ループが存在することが分かった。つまり、AKR1B3によって合成されたPGF_<2α>は脂肪細胞の分化初期においてFP受容体に結合し、MAPキナーゼとホスファチジルイノシトール-3-リン酸キナーゼ経路を活性化し、COX-2の発現を上昇させることによりPGF_<2α>の産生量を増強し、PPARγの機能を強力に抑制することにより、脂肪細胞の分化の進展を抑制していることが分かった。
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