2010 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴ラマン分光法によるチトクロムC酸化酵素のプロトン輸送機構の解明
Project/Area Number |
21570171
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小倉 尚志 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 教授 (70183770)
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Keywords | ミトコンドリア / 細胞呼吸 / チトクロムc酸化酵素 / 酸素活性化 / プロトンポンプ / 共鳴ラマン / タンパク質構造ダイナミクス / 酸化的リン酸化 |
Research Abstract |
チトクロムc酸化酵素はミトコンドリアの呼吸鎖電子伝達系の末端にあり、分子状酸素を水にまで還元する反応に共役してプロトンポンプを行う細胞呼吸の鍵酵素である。2つのヘム(ヘムα_3とヘムα)を持つが、ヘムα_3が酸素還元の触媒部位であり、ヘムαはプロトンポンプ駆動部位である。本研究の目的は、共鳴ラマン分光法により、ヘムの酸化還元に伴う側鎖置換基や軸配位子の動的構造変化が如何にしてプロトンポンプに結びつくのかを明らかにすることである。ヘムα側鎖(ヒドロキシファルネシルエチル基およびプロピオン酸基)のラマン線の帰属を決定するために側鎖と相互作用するアミノ酸を置換してその共鳴ラマンスペクトルへの影響を調べる。また、ヘムα_3におけるFe-His結合のダイナミクスを観測する。今年度の実績は下記の通りである。 (1) ヘムα側鎖と相互作用することが結晶構造よりわかっているアミノ酸残基の部位特異的変異体を調製するために発現ベクターを導入した6種類の宿主菌(Paracoccus denitrificans)を作成した。(2) CO結合型ウシ心筋チトクロムc酸化酵素のCO光解離後10ns~5msの時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定したところ、5ms以降にヘムα_3側鎖ビニル基とタンパクとの相互作用が大きくなることがわかった。これはCO結合型から平衡状態還元型への構造変化に伴い、ヘムが水平方向に変位することを意味するが、結晶構造の結果と矛盾しない。(3) CO光解離後のFe-His結合の張力が時定数約1μsで減少する事が初年度にわかっていたが、その理由を説明するためにヘミンに1,2-ジメチルイミダゾールを結合させたモデル化合物についてタンパク質と同様の実験を行った。
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