2011 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴ラマン分光法によるチトクロムC酸化酵素のプロトン輸送機構の解明
Project/Area Number |
21570171
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小倉 尚志 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 教授 (70183770)
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Keywords | 好気呼吸 / チトクロムC酸化酵素 / 酸素還元 / プロトンポンプ / 振動スペクトル / ヘム / 水素結合 / 部位特異的アミノ酸置換 |
Research Abstract |
チトクロムc酸化酵素(CcO)は分子状酸素を還元して水を生成するとともにプロトンポンプ反応によりプロトン駆動力を形成し、ATP合成に寄与する。2つのヘムのうちヘムαがプロトンポンプを駆動するとされる。本研究ではヘムα側鎖に由来する共鳴ラマン線の帰属を決定することが目的である。そのためヘムα側鎖2位ヒドロキシファルネシルエチル(HFE)基のOH基または側鎖7位プロピオン酸基と水素結合しているアミノ酸に変異を導入しラマンスペクトルの変化を調べる。ウシ心筋酵素では困難であるため、細菌Paracoccus denitrificansを用いた。T50A、S417AおよびのY406Fの3種の点変異CcOを作成し、可視吸収スペクトルおよび電子伝達活性を測定したところ野生型(WT)と比べで差がなかった。次に励起波長413.1nmの共鳴ラマンスペクトルを還元型について測定し比較した。WTで1251cm^<-1>のラマン線はT50Aでは低波数シフトしたが、S417Aでは変化が検出されなかった。この結果から、1251cm^<-1>のラマン線をHFE基に由来すると帰属した。OH基はT50と水素結合していることがはっきりした。これは結晶構造の再検討を促す結果である。一方、WTで364cm^<-1>のラマン線はY406Fでは低波数シフトしたのでこれをを7位のプロピオン酸基のC_βC_cC_d変角振動に帰属した。これらの新規帰属はプロトンボンプ機構を解明するための強力な手掛かりを与える。 CO結合型CcOのCO光解離後のヘムの構造ダイナミクスをΔt=10ns~5msの時間領域で共鳴ラマン分光法により追跡した。平衡状態還元型とCO結合型の中間的コンフォメーションを検出した。また、2つのヘムの協同的ダイナミクスがΔt=5ms以降に検出された。これらの結果は、酸素還元とプロトンポンプの共役機構を研究する上で重要な知見である。
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Research Products
(25 results)