2009 Fiscal Year Annual Research Report
生理的条件下で天然構造と平衡にあるタンパク質の変性構造の解明
Project/Area Number |
21570173
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
瀬川 新一 Kwansei Gakuin University, 理工学部, 教授 (70103132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 康夫 関西学院大学, 理工学部, 教育技術主事 (40268511)
油谷 克英 独立行政法人理化学研究所, 播磨研究所, 上級研究員 (90089889)
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Keywords | タンパク質フォールディング / H / D交換反応とNMR測定 / リゾチームS-S結合欠損変異体 / 超好熱菌由来のタンパク質 / ピロリドンカルボキシルペプチダーゼ / タンパク質の変性状態 / グリセロールによる選択的水和 |
Research Abstract |
2つのタンパク質を用いて、タンパク質foldingの初期過程を研究した。リゾチームS-S結合欠損変異体の研究においては、4種の1SS変異体のうち、リゾチームのN末とC末端を連結するCys6とCys127間にS-S結合を残した1SS[6-127]変異体だけが、他の3種の1SS体に比べて、有意に空間的秩序構造を維持する能力が高いことを見出し、リゾチーム分子の構造形成にとってCys6-Cys127間のS-S結合が特別に重要であることを明らかにした。グリセロール添加によって誘導される部分秩序構造をアミノ酸残基レベルの分解能で調べるために、水素/重水素(H/D)交換NMR分光法を用いて研究した。その結果、1SS[6-127]変異体に誘導される構造は、安定性が劣るものの、すでに論文発表[Biopolymers 91(2009), 665-675]された2SS[6-127, 64-80]変異体に誘導される部分構造とよく似ていることが分かった。 一方、ピロリドンカルボキシルペプチダーゼ(PCP)を用いた初期構造形成の実験においては、立体構造をまだ形成していない段階で、主にαヘリックスを中心にして、徐々に部分秩序構造が成長していく様子を直接観測することに成功した。pH3.0、4℃の条件下では8時間程度のインキュベーション時間の後、分子全体に渡るall-or-none型の構造変化が起きて立体構造形成が始まる。変性剤を除去した直後から天然PCPに存在するα6ヘリックスはH/D交換からプロテクトされた状態になっており、インキュベーション中に、さらにα4ヘリックスの構造も回復する現象が観測された。しかし実験にはまだ不明な点が多く、pH3.0の条件下でも、4℃と8℃ではPCPの無秩序鎖状態に大きな違いが存在することが分かった。これらの違いの詳細を明らかにすることが折りたたみ反応初期過程の正しい描写を得るための鍵になると感じている。
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