2009 Fiscal Year Annual Research Report
M期染色体上におけるエピジェネティック情報の継承機構
Project/Area Number |
21570177
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小村 潤一郎 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 助教 (10215410)
|
Keywords | クロマチン / 細胞周期 |
Research Abstract |
高等真核生物の細胞では、細胞周期のM期には、すべての遺伝子の転写が停止し、活性遺伝子のプロモーターなど転写関連装置の構築は失われ、転写因子などの核タンパク質の多くも脱落する。しかし、不活性なM期染色体上においても、もともと活性であった遺伝子には何らかのマークが付いており、M期終了後、マーク付きの遺伝子のみ構築を再建し転写を再開すると考えられている。本研究では、これらの現象の機構の解明を目的とするが、本年度は、M期における転写関連装置構築の消失と核タンパク質の脱落が、ヒストン化学修飾の変動によって指示されている可能性を検討した。検討した作業仮説は、「ヒストンの隣接部位の二重修飾による制御」、具体的には、「ヒストンH3のリジン4、リジン9のメチル化、アセチル化が当該部位における転写関連装置の成立/不成立、核タンパク質の結合/脱落を指示しており、隣接部位(スレオニン3、セリン10)のM期特異的リン酸化がその細胞周期における変動を指示している」というものである。実験操作としては、HeLa細胞を薬剤もしくはsiRNA処理し、M期特異的なヒストンH3スレオニン3もしくはセリン10のリン酸化を阻害した場合に、転写因子などのDNA結合核タンパク質(TATA-binding protein、Heat shock factor 1、CTCF、Ku70)のM期における脱落が妨げられるか否かを、蛍光抗体法で調べた。結果は、M期特異的ヒストンリン酸化を阻害しても、核タンパク質の脱落は妨げられないというものであり、上記作業仮説を支持しないものとなった。すなわち、M期特異的ヒストンリン酸化は、ヘテロクロマチンタンパク質HP1の脱落を指示しているとされているが、同様の機構は必ずしも転写因子など他の核タンパク質の場合には当てはまらないと考えられる。
|