2011 Fiscal Year Annual Research Report
M期染色体上におけるエピジェネティック情報の継承機構
Project/Area Number |
21570177
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小村 潤一郎 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10215410)
|
Keywords | クロマチン / 細胞周期 |
Research Abstract |
前年度の研究により、細胞周期のM期における転写因子の染色体からの脱落が、この時期の染色体の凝縮によって引き起こされるわけではないことが示された。このことは、M期には、染色体の凝縮のためにDNAにさまざまな機能タンパク質がアクセスすることができず、DNAの代謝活動はすべて不可能になっているはずであるとするこれまでの通念に疑問を呈するものと考える。DNAの代謝活動のうち、転写、DNA複製については、M期に起こらないことが証明されている。一方、DNA修復については、そのように想定されているが実験的証拠はほとんどない。そこで、M期におけるDNA損傷修復の定量的解析を行い、そのほかの時期(間期)の場合と比較した。M期のHeLa細胞に紫外線照射後の(6-4)光産物の修復をELISA法で定量したところ、間期の場合と同様に非常に効率のよい修復が見られた。このことは、M期の高度に凝縮した染色体においても、ヌクレオチド除去修復系(とくにglobal genome repairと呼ばれる系)の酵素はDNAの損傷部位に効率よくアクセスし酵素活性を発揮することができることを示している。つぎに、M期細胞に放射線照射後のDNA二本鎖切断の修復をstatic-field gel electrophoresis法で定量したところ、間期の場合よりは遅いもののやはりかなり効率よく修復されることがわかった。このことは、ふたつある二本鎖切断修復の主経路(homologous recombinationおよびnon-homologous end joining)のうち少なくともひとつはやはりM期の凝縮した染色体において作動可能であることを示唆している。以上のように、凝縮したM期染色体はDNAの代謝活動に関して不活性なものであるとするこれまでの通念を否定する結果が得られた。
|