2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア依存性新規TGFβシグナルによる細胞悪性化及び幹細胞形質誘導機構
Project/Area Number |
21570205
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 教授 (60245876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 助教 (60349040)
石川 文博 昭和大学, 薬学部, 助教 (60515667)
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Keywords | ミトコンドリア / CREB / CHOP-10 / HMGA2 |
Research Abstract |
TGFβシグナルのうち、ミトコンドリア機能の低下が仲介する機構を解析するために、今年度は、ミトコンドリアを枯渇させたρ0細胞をモデル系とし、以下の検討を加えた。ミトコンドリア機能不全下で観察された表現形のうち、特に、細胞間接着の乱れに関して、CREB(cAMP responseelement binding protein)転写因子を中心とする転写カスケードが関与する可能性を検討した結果、活性化されたCREBがEMTの誘導因子であるHMGA2をタンパク質レベルで誘導(安定化を促進)し、その結果、Snail等のEMT制御転写因子の発現が上昇してEMT様の悪性化形態が引き起こされた可能性が示された。ρ0状態でもCREBの機能を阻害すると上皮形態が回復し、CREBの関与を支持する結果であった。別途、integrinα1の発現もCREBの下流で制御されていることがわかり、CREB/HMGA2経路により、細胞の接着性も制御されていることがわかった。また、この経路上流でCREBの活性化に関わるキナーゼはcalcium/calmodulin kinaseであった。 ρ0(モデル系)の結果を受けて、実際のヒトがん細胞株の中で当該経路が活性化している例を検索した結果、肝がん細胞株HepG2が該当した。この知見と一致して、最近、このがん細胞株に関してミトコンドリア全DNA配列が決定され、実際に呼吸鎖機能が不全になる変異が生じていることが報告された。従って、HepG2では、ミトコンドリア機能不全を引き金として、CREB/HMGA2経路が活性化され、悪性化形質の獲得に寄与していることが示唆された。CREBの活性化とHMGA2の発現上昇はTGFβシグナル下でも報告されており、今後、本課題で得られた結果を元に、TGFβシグナルのうちミトコンドリア機能低下を介する経路の詳細を明らかにする予定である。
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Research Products
(8 results)