2011 Fiscal Year Annual Research Report
体内受精環境に対応する精子運動調節タンパク質の適応的進化に関する研究
Project/Area Number |
21570236
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡邉 明彦 山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中内 祐一 山形大学, 理学部, 助教 (60250908)
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Keywords | 体内受精 / 精子運動 / 機能進化 / 両生類 / 輸卵管 |
Research Abstract |
両生類は脊椎動物の中で陸上環境に適応した最も原始的な動物群であり、その進化において体外受精から体内受精へ受精様式の改変が起こったことが示唆されている。私達は、輸卵管から分泌されて卵ジェリー層に蓄積される精子運動開始因子(SMIS)による精子運動開始が、イモリの体内受精の成立に必須であることを発見した。この現象は両生類の体内受精の確立に大きく寄与した可能性が考えられるが、この事を検証するために本研究を実施している。本年度は、これまでに単離したSMIS候補遺伝子の発現様式をRT-PCR法により調べた。アカハライモリの卵巣、輸卵管、精巣、輸精管、心臓、肝臓、脾臓、小腸、肺、腎臓の各組織から抽出したRNAをoligodTプライマーを用いて逆転写し、SMIS候補遺伝子特異的なDNAプライマーを用いてPCRを行ったところ、輸卵管のみでプライマー特異的なDNAの増幅が見られた。輸卵管を構成する曲部と子宮からそれぞれ抽出したRNAを用いて同様の実験を行ったところ、それぞれにおいてDNAの増幅が見られた。また、生殖腺刺激ホルモンの注射により排卵を誘発したイモリの輸卵管では、子宮において発現量が多くなる一方、曲部においては発現量が低下した。これらの結果から、SMIS候補遺伝子は輸卵管特異的に発現し、子宮と曲部とでは異なる発現制御を受けることが明らかになった。 一方、SMIS候補遺伝子がコードするタンパク質の精子運動開始活性を検討するために、ヒト血球に由来する株細胞を用いて、発現ベクターに組み込んだSMIS候補遺伝子を導入してタンパク質合成を誘導した。しかし、導入した細胞は、48時間程度で死滅し、リコンビナントタンパク質を得ることができなかった。尾の原因として、このタンパク質が高い重合性をもち、高濃度環境下では容易に不溶化してしまうことがSMISタンパク質の解析により示され、この性質が導入した細胞の死滅につながったものと考えられる。そこで、SMIS中の親水性領域を形成するアミノ酸配列をもつ4種類の合成ペプチドを作成し、精子に作用させたところ、システインノットドメイン中の領域を形成するペプチドにのみ精子運動開始活性が検出された.これは、同領域がSMISの活性部位であり、SMIS候補遺伝子がSMIS遺伝子であることを示している。
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Research Products
(6 results)