2011 Fiscal Year Annual Research Report
性決定元祖遺伝子の双方向進化―精巣および卵巣決定―
Project/Area Number |
21570239
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三浦 郁夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10173973)
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Keywords | 性決定 / SRY / 卵巣決定 / SOX3 |
Research Abstract |
哺乳類の精巣決定遺伝子SRYは、SOX3遺伝子から進化したことが知られている。ツチガエルのZZ/ZW型性染色体をもつ1つの地域集団では、このSOX3がZW性染色体上に存在し、しかもZW幼生の生殖腺で強く発現する。このことから、哺乳類とは逆に卵巣決定機能が示唆されている。そこで、本年度は、ツチガエルSOX3遺伝子を受精卵に導入するトランスジェネシスの実験を行い、SOX3遺伝子の機能を調べた。プロモーターはツチガエル自身のSOX3遺伝子の5'上流約3kbを用い、導入手法にはゼブラフィッシュやアフリカツメガエルで導入効率の高いメダカのトランスポゾンTol2mRNAを供導入する方法と、もう一つのMeganuclease法を併用した。受精卵に導入した後、生殖腺の観察は変態後に行った。W-SOX3遺伝子が導入されたZZ個体を1個体得た。生殖腺の外部形態は精巣であり、組織切片においても精巣構造が確認された。ただし、生殖腺の周辺部は卵黄状の細胞質をもつ細胞が確認され、卵巣化の様相も観察されたが、明確な同定はできなかった。さらに、生殖細胞のみに遺伝子が導入されたZZ2個体を得たが、これらは典型的な精巣構造を示した。また、W-SOX3をXY集団の受精卵に導入したところ、生殖細胞のみに導入されたXY6個体を得たが、いずれも正常な精巣構造を示した。一方、Y染色体にあるY-SOX3をXX受精卵に導入したところ、1個体のXXを得たが、これは正常な卵巣構造を示した。以上の結果から、W-SOX3とY-SOX3は、少なくとも生殖細胞に導入された場合は、いずれも遺伝的な性を変更する機能を示さず、それぞれ卵巣決定および精巣決定機能を有していないと予想される。しかし、体細胞への導入個体を得ていないため、結論を導くのは現時点ではむずかしい。正確な機能解析の結果を知るため、F1の調査が必要である。
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