2009 Fiscal Year Annual Research Report
酵素と基質の分子共進化の研究-硬骨魚の孵化の機構をモデルとして
Project/Area Number |
21570240
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
安増 茂樹 Sophia University, 理工学部, 教授 (00222357)
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Keywords | 遺伝子 / 進化 / 酵素 |
Research Abstract |
孵化酵素遺伝子を硬骨魚類で網羅的に解析すると、単一酵素の分解系から、2種の酵素の分解系に進化したことがわかる。卵膜分解機構をいろいろな系統の魚種を用いて調べ、比較することで孵化酵素タンパク質の機能進化の過程を解明する。分子系統解析から、2つの複数酵素の酵素系が存在することがわかっている。先に明らかとされている正真骨魚類のHCE-LCE系にくわえグループAとBの酵素系の卵膜分解機構を明らかとすることを目的とする。グループAとBの酵素系は、ニシン・骨鰾類の早くに分岐する魚種で見られるもので、系統的にHCE-LCE系とは異なる進化を経ていると考えられる。AとBの酵素系を持つニシンとアユ孵化酵素精製を試みているが若干時間がかかることが予想される。一方、平行して行った実験で、同様にAとBの酵素系を持つカタクチイワシとミルクフィシュより、十分に活性のあるリコンビナント孵化酵素が大腸菌の系により作製できることが明らかとなった。現在、カタクチイワシとミルクフィシュを材料として卵膜の分解機構を進めており、予備的な実験より、新規の機構であることが予想されている。今後は上記した魚種の卵膜の分解機構を解明し、酵素の基質特異性と卵膜の構造の変異が、進化過程でどのように新規の分解系を獲得したかを明らかとする。進化過程での特異性の変化に重要な孵化酵素アミノ酸残基と、卵膜タンパク質の切断部位アミノ酸配列の変異から、タンパク質レベルでの酵素と基質の共進化のメカニズムを考察することを目指している。また、卵膜タンパク質遺伝子をクローン化して、分子系統樹を作製し、孵化酵素遺伝子の分子系統樹と比較することにより、遺伝子レベルでの共進化過程の研究も同期して進行中である。
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