2010 Fiscal Year Annual Research Report
動物の進化におけるミトコンドリアの遺伝暗号とtRNAの共進化の分子機構
Project/Area Number |
21570242
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 公綱 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 名誉教授 (00134502)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横堀 伸一 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (40291702)
鴫 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディシナル情報研究センター, 研究員 (20392623)
|
Keywords | ミトコンドリア / 遺伝暗号 / tRNA / 修飾塩基 / ゲノム解析 / 分子進化 |
Research Abstract |
遺伝暗号は1961年の発見と5年後の遺伝暗号表の確立以来、全生物界で共通、普遍とされたが、1979年になってウシとヒトのミトコンドリアで非普遍暗号が発見されたことを契機として、動物ミトコンドリアや種々の生物で、普遍暗号に従わない例が続々と発見された。現在では遺伝暗号は生物の進化に伴って変化し得るものであることが広く認識されるようになったが、その変化のメカニズムや必然性についてはまだ十分理解されていない。我々は後生動物ミトコンドリアでさまざまな暗号変化を発見し、またそれを解読するtRNAのアンチコドン1字目に存在する特殊な修飾塩基を発見してきた。本研究では各動物種のミトコンドリアにおける暗号変化の分子機構を探るために、個々の動物種のミトコンドリアについてコドンとアミノ酸の対応関係のより詳細な解析を行い、コドンとtRNAの共進化の分子機構を解明することを目的とした。本年度は特に無脊椎動物と脊椎動物の中間に位置するホヤ(マボヤ:Halocynthia roretziに注目し、その暗号変化(UGA:終止コドン->Trp、AUA:Ile->Met、AGA/G:Arg->Gly)に対応するtRNAを単離精製した。それらのアンチコドンの修飾塩基を高精度質量分析装置を用いて分析した結果(東大・工・鈴木研究室との共同研究)、それらすべてのtRNAのアンチコドン1字目に5-タウリノメチルウリジン(τm^5U)を発見した。これがコドン3字目のAとGを認識することにより(これはヒトミトコンドリアのシステムでtRNA^<Leu>UUAを用いた実験から証明済み)、上記の暗号変化を引き起こすことが結論された。またホヤでは例外的にMet用のtRNAが2種類存在するが、アンチコドンCAUを持つ方は開始tRNAであることが推測された。現在その証明実験を施行中である。(論文準備中)
|