Research Abstract |
本研究は,好硝酸性葉菜類にNH_4^+耐性を付与するための基礎情報を得ることを目的に,NH_4^+過剰ストレス条件下に比較的耐性であるサラダナと感受性であるコマツナを材料に,NH_4^+施肥およびNH_4^+代謝抑制処理に対する反応性を調査した.両種において,培養液のNO_3^-:NH_4^+比が0:10の条件で,生体重が減少したが,減少程度はサラダナで小さかった.また,同様の条件下で葉のアンモニア濃度はコマツナでは顕著に高まったが,サラダナではNO_3^-:NH_4^+比が10:0と同レベルであった.NO_3^-:NH_4^+比が0:10の条件でのアンモニア代謝酵素において,コマツナではグルタミン合成酵素(Gs)およびグルタミン酸合成酵素(GOGAT)活性が低下したが,サラダナでは維持された.同様の条件下で,両種のグルタミン酸脱水素酵素(GDH)のアミノ化活性は増加し,脱アミノ化活性は低下した.このように,NH_4^+過剰条件下において,植物体内におけるNH_4^+蓄積を回避するためには,Gs活性の維持が必要であることが示唆された.Gs活性を外生的に阻害した条件下におけるGs代替のNH_4^+代謝系の効果を検討するために,両種にGs阻害剤であるバスタ7500倍希釈液を散布し,NH_4^+濃度およびNH_4^+代謝酵素活性への影響を調査した.NH_4^+濃度は,コマツナでは処理後早い段階で急激に増加し,その後も高いレベルを維持したが,サラダナでは,処理後一時的に高まるものの,処理後7日目には水散布と変わらないレベルまで低下した.Gs活性は,コマツナではバスタ処理で急激に低下したが,サラダナでは処理による効果が認められなかった.GOGAT活性は,両種とも処理後急激に低下し,その後回復する傾向となったが,回復時期はサラダナの方が早かった.GDHのアミノ化活性は,処理後両種とも増加したが,脱アミノ化活性は,コマツナに比較してサラダナで低かった.以上より,NH_4^+過剰ストレス条件下におけるNH_4^+代謝には,Gs活性の維持が必要であり,Gs-GOGATサイクルが機能しないあるいは低下した場合は,GDHによるNH_4^+代謝が有効に機能するときにNH_4^+耐性が得られるものと考えられる.
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