2009 Fiscal Year Annual Research Report
原始的な花粉媒介システムにおける花および果実の香り成分とその生態学的機能
Project/Area Number |
21580065
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
塚田 森生 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (20273352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40414875)
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Keywords | 花粉媒介 / 甲虫 / 香気成分 / GC / MS / チェリモヤ / アテモヤ / ケシキスイ / エステル |
Research Abstract |
ハナバチが花粉媒介しない原始的な植物のうち、バンレイシ科の果樹の花粉媒介のメカニズムの解明の一環として、花香の化学分析を通じて花と昆虫との相互作用を解明することを大きな目標としている。とくに、花が香りに関して自らの果実に擬態して果実食性の甲虫を誘引し、花粉媒介に役立てている証拠、そして花の開花ステージの進行に応じて花香が変化し、虫の行動を制御している証拠を化学的につかむことが本研究の目的である。3年計画の初年度である今年は、主に果樹チェリモヤの花の香りをサンプリングし、これをGCおよびGC/MSにより分析した。得られた花香成分のほとんどはエステル類であると推定された。雌性先熟である本種の花は、♀ステージの時に甲虫類をにおいで誘引し、約24時間後の♂ステージの時には脱出させることで花粉媒介を成立させると考えられる。♀ステージの花(以下♀花、♂も同様)からの花香の経時的なサンプリングの結果、♀花は他の花が♂となる夕方頃に花香成分の放出量を大きく増加させていた。これにより、♂花から脱出した直後の甲虫を効率よく誘引できると見られる。♀花の花香と♂花の花香の構成成分は似通っていたが、♀花にしか見られない成分が存在するほか、それらの構成比も異なっているように考えられたので、主成分分析に掛けたところ、第1主成分と第2主成分からなる平面上で、♀花のグループと♂花のグループを完全に分離することが出来た。したがって、甲虫はこの違いに基づいて訪花と脱出を行っているものと示唆された。本研究で得られた花香成分を他の果樹の花、さらには果実と比較した結果、エステルに富むという特性は通常の果樹の花には見られず、むしろ多くの果実に近いものであり、主成分分析でもそのようなグルーピングが出来た。ただし、必ずしも自らの果実に近いとは結論できなかった。
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Research Products
(1 results)