2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21580066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢野 修一 京都大学, 農学研究科, 助教 (30273494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 応用生物科学部, 准教授 (40414875)
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Keywords | カンザワハダニ / アミメアリ / カブリダニ / ナミハダニ / 立体網 / 集合性 / 捕食回避 / 生物的防除 |
Research Abstract |
平成23年度には、ハダニと捕食者のカブリダニを閉じ込めたリーフディスク上でアリが自由に採餌できる人工生態系を用いて、カブリダニによるハダニのトップダウン制御をアリが直接・間接的に妨害することを予測し、これを検証する実験を行ったところ、アリによるハダニの捕食をカブリダニが助けるという、予測とは異なる結果を得た。この結果は以下のように解釈できる。ハダニが作る網に侵入しないアリに対してハダニは網に引きこもり、網に侵入するカブリダニに対してハダニは網を出て捕食を避けるが、アリとカブリダニの両者がいる場合には、網を利用したハダニの相容れない捕食回避戦略が破綻し、ハダニはカブリダニに網から追い出されてアリに捕食されるのである。応用的観点からは、カブリダニを用いたハダニの生物的防除にアリが貢献することを示唆する。以上の成果を学会で発表し(13.研究発表[学会発表]を参照)、高評価を得た(第27回個体群生態学会大会ポスター優秀賞:大槻・矢野)。 また、上記の網を利用したハダニの捕食回避戦略を研究する過程で、ハダニが捕食者から身を守るために網を共同で利用し、それがハダニの集合性をもたらすことを発見した。この成果はBehavioral Ecology and Sociobiology誌に発表した(13.研究発表[雑誌論文]を参照)。特にナミハダニとカンザワハダニが捕食者からの脅威に対抗するために種を超えて協力する現象は社会的関心を呼び、京都大学広報のwebページ(15.備考)をはじめ、Yahoo Japan,Livedoor等のwebニュースでも広く紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの成果は、当初の研究計画で予想した結果とは異なるが、いずれも当初の予測を検証する過程で発見された成果であり、本研究計画によって生まれた成果であることは疑いない。むしろ、当初の計画にない予期せぬ発見こそが、科学研究のあるべき姿だと考える。これらの研究成果は学会誌等にて高い評価を得るばかりか、京都大学広報やwebニュース等によって報道され高い社会的関心を呼んだ(9.研究実績の概要を参照)。これもまた基礎研究の大きな社会的役割だと考える。よって(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はカブリダニによるハダニのトップダウン制御をアリが妨害するカスケード効果を予測したが、研究の進展により、アリによるハダニの捕食をカブリダニが助けるという、予測と異なる結果を得た。今後はこの結果の普遍性を確かめる。これまでは、ハダニとカブリダニを餌植物葉に閉じ込めてそれらの個体数変化を追跡してきたが、野外ではこの両者とも餌植物葉間を移動するため、人工生態系内で両者が餌植物葉間を移動できるシステムを構築し、両者の移動と個体群動態にアリが及ぼす影響を検証する。一方で、カブリダニの不在時にハダニがアリに捕食されにくい理由を解明するために、ハダニの立体網と餌植物葉面の化学組成の類似性を引き続いて調べる予定である。またこれまでに得られた結果を順次学会誌に投稿する。
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Research Products
(13 results)