2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21580073
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中原 治 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (10253519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 正人 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (10226194)
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Keywords | 養分制限 / 養分循環 / 温帯林 / 地球温暖化 / 有機物分解 / 無機化 / 二酸化炭素 / 窒素飽和 |
Research Abstract |
窒素添加による有機物分解速度の変化は、地球温暖化の将来予測のため、重要な研究課題となっている。本研究では、異なる養分状態にあるカラマツ林の林床試料を用い、窒素添加が二酸化炭素放出速度に与える影響を調べた。このために、25kg/haに相当する窒素添加を行い、25℃の室内培養を試みた。その結果、いくつかの新知見が得られた。第一に、窒素添加は培養初期の呼吸速度が高い時期に呼吸を阻害し、その阻害の程度は、対照処理(窒素無添加)の呼吸速度が高いほど大きかった。従来、リグニン含量の高い有機物では、窒素添加はリグニン分解を(1)リグニン分解酵素の分泌を抑制するか、(2)リグニンと窒素の非生物的な反応によって新しい難分解性物質を生成する、という径路で呼吸速度を抑制すると考えられてきた。しかし、今回の我々のデータは、窒素添加による呼吸速度の抑制は、難分解性のリグニンの分解を抑制するのではなく、むしろ、易分解性の有機物の分解を抑制することを示唆する。この結果は、従来の説を覆す上で大きな役割を果たすことを示唆する。加えて、(1)呼吸速度の抑制とリグニン含量に相関がないこと、(2)リグニン分解酵素の中核であるフェノールオキシダーゼ活性に窒素添加が影響を与えないこと、(3)0.2μmメンブランフィルタで濾過した林床試料の水抽出液に微生物懸濁液を添加した系においても、窒素添加が呼吸速度を抑制することを明らかにした。こうした結果は、近年、データの支持がないものの広く提案され始めてきたN mining仮説を支持する。この仮説によれば、土壌中の有機態窒素は比較的難分解性のため、その無機化に多大なエネルギーが要求されるが、無機態窒素の添加により、このエネルギーの一部を必要としなくなるため、その獲得に要した呼吸も低下するというものである。本研究の結果の全ては、この仮説と矛盾しないものであった。本研究の結果は、窒素添加による有機物分解速度の変化を予測する上で、非常に有用な基礎的知見を与えるものであった。
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Research Products
(1 results)