2011 Fiscal Year Annual Research Report
微量金属に着目したストレス性神経障害のメカニズムとその予防
Project/Area Number |
21580116
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
玉野 春南 静岡県立大学, 薬学部, 研究員 (30322697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90145714)
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Keywords | うつ病 / ストレス / 亜鉛欠乏食 / 海馬 / 微量元素 / グルココルチコイド / グルタミン酸 |
Research Abstract |
亜鉛不足による味覚障害はよく知られているが、脳機能障害についてはあまり理解されていない。 マウスやラットに亜鉛欠乏食を与えると速やかに血清亜鉛濃度が低下し、食欲が減退する。その結果、血清グルココルチコイド濃度が上昇する。これは、ストレス応答を担う視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系の活性化による副腎皮質からのグルココルチコイド分泌増加によるが、この増加が亜鉛不足時の脳機能障害と関係することを示してきた。 血清グルココルチコイド濃度が上昇する原因は明らかでないが、血清亜鉛濃度の低下ならびに食欲減退が関係すると考えられる。一方、亜鉛摂取が不足しても脳内亜鉛濃度は容易には減少しない。実験動物を長期間亜鉛欠乏食で飼育すると、脳細胞外亜鉛濃度は減少するが、脳組織亜鉛濃度を含めると有意な減少にはならない。グルココルチコイドは脳の二つのバリアシステムを通過し、脳内の細胞に発現する受容体を介して作用する。グルココルチコイド受容体の発現は海馬神経細胞で高く、受容体を介した作用は歯状回顆粒細胞の生存に不可欠である。最近、海馬神経新生はストレス応答の調節に関係し、神経新生が抑制されると、うつ症状を示すことが報告されている。 本研究では、亜鉛欠乏食ラットにおいて海馬神経新生が抑制されこと、この抑制がうつ様行動増加と関係することを示した。そして、亜鉛不足はうつ発症のリスクファクターであることを提唱した。 また、亜鉛不足による隔離飼育マウスの攻撃行動は亜鉛不足によって増加するが、この行動異常にはグルタミン酸作動性神経活動の亢進あるいはGABA作動性神経活動の減弱が関与することを明らかにした。
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Research Products
(13 results)