2009 Fiscal Year Annual Research Report
スイカ果実に含まれるスイカ種子発芽抑制物質の有機化学的研究
Project/Area Number |
21580122
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 英幸 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 准教授 (20344492)
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Keywords | 発芽阻害 / 植物生存戦略 / アブシシン酸 / 植物ホルモン |
Research Abstract |
平成21年度の研究によりスイカ[Citrullus lanatus (Thunb.) Matsum and Nakai]果実に含まれるスイカ種子発芽抑制物質としてアブシシン酸(ABA)ならびにABAグルコシドエステル(ABA-Glc ester)の単離に成功した。また、UPLCMS/MSによりそれぞれの化合物の含有量を算出した。生物検定より測定された含有量で十分種子発芽阻害が可能である事もあきらかとした。現在、本件に付いて英文学術雑誌への投稿を予定し、原稿を準備中である。また、他の種子阻害物質も存在する事が明らかとなっている。他の活性物質については種々のカラムクロマトグラフィー、HPLC(High Performance Liquid Column Chlomatography)の手法により精製を行なっているが、多波長UV吸収測定器のUVパターンよりindole-3-carboxylic acid類縁体と予想している。構造決定を行なうためにNMR等の測定が必要であり、測定には数mgの純品が必要であるが、現在の手持ちの素材より得られると思われる。 本研究の成果より、スイカにおける化学物質を介した果実中での発芽抑制機構が明らかとなった。自家中毒を起こしやすいスイカが自分の親の土地で出来るだけ発芽をせづ、果実を食べた捕食者により他の土地へ運んでもらうと言う「植物の生存戦略」の一端が伺えた。また、本研究の成果はスイカの連作傷害のあらたな一因が明らかとなった。連作傷害を回避する一手段として、収穫されなかったか実を圃場より取り去る事も有効な手だてと考えられた。この件を実証すべく、実際の圃場にて土壌を採取し、どの程度のABAやABA-Glc esterが含まれているか測定が必要となる。この点も議論したいところである。
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