2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物におけるトリプトファン代謝の機能解明を志向した新規阻害剤の開発と利用
Project/Area Number |
21580126
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石原 亨 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80281103)
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Keywords | トリプトファンデカルボキシラーゼ / IAA / イネ / イネごま葉枯病菌 / トリプタミン / セロトニン |
Research Abstract |
イネは病原菌の感染を受けると、抵抗反応の一部としてセロトニンを生成する。しかし、トリプタミンからセロトニンを合成できないs1変異体がごま葉枯病菌(Bipolaris oryzae)の感染を受けると、セロトニンの代わりにトリプタミンを蓄積する。また、これにくわえインドール-3-酢酸(IAA)も蓄積することが見出された。昨年までの阻害剤を用いた実験で、このIAAはトリプタミンに由来することが判明している。本年度は、B.oryzaeが感染したs1変異体におけるIAA蓄積のしくみを解明することを目的とした。 s1変異体にB.oryzaeを接種してIAAの蓄積量を調べた。IAAの蓄積量は、B.oryzaeの接種によって、コントロールのおよそ20000倍に増加した。次に、他の病原菌の感染によってもIAAの蓄積が生じるのか検討した。B.sorokinianaの接種はB.oryzaeと同様に高濃度のIAAの蓄積を引き起こしたが、Magnaporthegriseaを接種した場合にはIAAはほとんど増加しなかった。また、IAAの前駆物質であるトリプタミンや、イネに対してエリシター活性をもつ塩化銅を処理してもIAAの蓄積量はほとんど変化しなかった。さらに、トリプタミンの存在下でB.oryzaeを培養したところ、培地中にIAAとインドール-3-エタノールが蓄積してくることがわかった。以上の結果から、s1変異体に高濃度のIAAが蓄積するのは、B.oryzaeがトリプタミンを代謝したためと推定された。 次に、B.oryzaeによるトリプタミンからIAAへの変換の意義を考察するために、トリプタミンとセロトニンがB.oryzaeの生育に与える影響を調べた。その結果、トリプタミンもセロトニンも高濃度ではB.oryzaeの生育を著しく抑制することがわかった。さらに、B.oryzaeはセロトニンを5-ヒドロキシIAAに変換した。したがって、B.oryzaeによるトリプタミンやセロトニンの対応するカルボン酸への変換は、毒性を持つインドールアミン類を代謝するためであると推定された。
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Research Products
(5 results)