2010 Fiscal Year Annual Research Report
食物繊維による小腸ムチン分泌促進機序の解明とその新たな栄養生理意義の探索
Project/Area Number |
21580136
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森田 達也 静岡大学, 農学部, 教授 (90332692)
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Keywords | ムチン / 食物繊維 / 粘度 / 嵩 / 杯細胞 |
Research Abstract |
食物繊維摂取時の小腸ムチン分泌促進作用は不溶性繊維では嵩、水溶性繊維(SDF)では粘性によって制御されるが、これらの作用はいずれも杯細胞数の増加を伴い、小腸の主要ムチン種であるMuc2発現量に影響しない(基礎分泌の増大)。しかし、SDFである低メトキシペクチン(LPC)は例外的で、その粘性や杯細胞数の増加とは無関係に小腸ムチン量を増加させる。本試験では、LPCがウロン酸ポリマーであることに着目し、数種の低粘性SDF素材についてムチン分泌促進作用を比較することで、LPCの小腸ムチン分泌促進作用の解析を試みた。実験にはラットを用い,SDFにはLPCおよび高メトキシペクチン(HPC)、アルギン酸ナトリウムなどを用いた。この結果,(1)同じウロン酸ポリマーであっても小腸ムチン量を有意に増加させたのはLPCのみであった。(2)小腸ムチン量はネオマイシン飲水の有無にかかわらずLPCの要因でのみ有意に増加した。非絶食下でのMuc発現量は、いずれもLPCの要因により胃ではMuc5、空腸ではMuc2発現量の有意な増加が観察された。本試験の結果から、作用発現はガラクツロン酸ポリマーに特異的で、ウロン酸の遊離COOH基が必須であると推定された。LPCの小腸ムチン分泌促進作用は、高粘性SDFで観察される基礎分泌の亢進とは異なり、胃粘液腺細胞および空腸杯細胞におけるムチン合成/分泌促進によって発現すると推定された。なお、LPCの活性は低分子化によっても維持されることを確認している。
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