Research Abstract |
脳神経賦活作用については,従来からPC12細胞を使用したスクリーニング法がよく知られており,PC12細胞はNGFなどの神経栄養因子により神経細胞様に分化し,神経分化,突起伸展のモデルとしてよく使用されている.しかし本研究では脳内で記憶を司る領域として重要な海馬の神経細胞を培養し,被験サンプルを添加した後,神経細胞の突起伸展の比較を行い,脳神経賦活作用物質探索のスクリーニング試験を行うことを特徴としている. 先行研究において,in vitro実験系による海馬神経細胞の神経突起伸展活性試験を行った結果,コーヒーやリンゴなどに主成分であるChlorogenic acidやその代謝物のm-Coumaric acidなどのポリフェノール類に神経突起伸展活性を有することを見出している.本研究では,さらに食品成分を中心として広く当研究室保有の化合物ライブラリーから海馬神経突起伸展活性成分探索を行った.その結果,3,6'-Di-0-sinapoylsucroseおよび2-C-[β-D-Apiofuranosyl-(1→6)-β-D-glucopyranosyl]-1,3,6-trihydroxy-7-methoxyxanthoneにコントロールと比較して有意な突起伸展活性が認められた.さらに関連化合物として,4-Methoxycinnamic acidにも顕著な突起伸展活性が見られ,その活性は先行研究により見出した活性成分のChlorogenic acidよりも顕著なものであった.今回見出した活性化合物の中でも,2-0-[β-D-Apiofuranosyl-(1→6)-β-D-glucopyranosyl]-1,3,6-trihydroxy-7-methoxyxanthoneのようなキサントン誘導体は,サプリメントのセントジョーンズワートやマンゴスチンなどの果実が属するオトギリソウ科植物,血糖値の上昇を穏やかにする健康茶として飲用されているサラシア属植物などに含まれることから,これら食品素材の機能性開発に期待できる基礎データが提供できた. さらに既に神経突起伸展作用を有することを見出しているCatechinをラットに経口投与し,Catechinの最高血中濃度に達する1時間後に,脳を摘出,メタノールでホモジナイズを行い,その抽出液について,各種HPLC分析法により,Catechinおよびその代謝物であるMono-O-methylcatechin類の脳内移行率の算出を検討している.
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