2011 Fiscal Year Annual Research Report
モデル小型魚類を用いた食嗜好・忌避に関与する味覚シグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
21580147
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
安岡 顕人 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (10453028)
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Keywords | 食品生化学 / 味覚 / メダカ |
Research Abstract |
動物は味覚系からの入力に対して様々な生理的応答を示す。本研究は、メダカをモデルとして脊椎動物に普遍的な食嗜好・忌避の情報伝達機構を解析することを目的とした。昨年度までに、シナプス依存的に神経細胞間を移動する小麦胚芽レクチン(WGA)遺伝子を旨味・苦味受容細胞に発現するトランスジェニックメダカを作製し、味蕾での細胞特異的な発現の確認や、脳での異所的発現がないことを確認した。今年度は、このメダカの脳におけるWGAタンパク質の分布を詳細に解析した。延髄においては、味蕾に投射する感覚脳神経の一次中継核が存在する顔面葉と迷走葉にWGAが検出され、網様体や運動核にも強いシグナルが見られた。この経路は摂食時の反射に関与しており、哺乳類の延髄孤束核、網様体、運動核に対応していると考えられる。中脳においては、視床や視床下部の一部にWGA陽性な細胞が存在した。興味深いことに、、高次な中枢の存在する終脳においても、複数の部位にWGAが輸送されていた。最近の研究によると、これらの部位は哺乳類の扁桃体(好悪などの意味付けに関与)や海馬(記憶に関与)に相当すると考えられている。このことは、メダカにおける味覚情報の処理が、哺乳類と基本的に同様の高次な中枢を介して行われていることを示唆する。また、末梢の特定の味受容細胞から高次の神経核につながる神経回路を標識した点でも、本結果は初めての事例である。成果は、2012年度の化学感覚研究会(Achems)と農芸化学会にて発表され、Journal of comparative neurologyにおける二次審査の途中である。以上の研究と並行して、メダカの変異体yanagiの味覚系神経についての形態学的解析を行った。yanagiホモ個体は実験環境で生存可能である。この幼魚の神経系を蛍光標識し、共焦点顕微鏡で観察することにより、顔面神経と迷走神経に形態異常を持つことが明らかになった。弐
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