Research Abstract |
腸内共生菌はそのほとんどが大腸内に局在しており,腸管免疫系に対して大きな影響を与えている.一方で,宿主にとっての生体外異物である腸内共生菌は,大腸において,完全に排除されることなく腸管内に共生できるとともに,腸管組織形成や腸管免疫系の応答に影響を与えていると考えられている.大腸の腸管関連リンパ組織については,盲腸リンパ節(CP)と呼ばれるリンパ組織が存在し,CPは小腸バイエル板(PP)と類似した組織の形成がみられるが,その機能については不明な点が多い.本研究はCPとPPの菌体成分に対する免疫応答を比較しながら,腸内共生系における大腸および小腸の免疫学的反応の特性を明らかにし,腸共生系の維持に寄与するプロバイオティクスの開発につながる基礎的な検討を行った.その結果,CP細胞の菌体成分LPSに対する免疫応答(炎症性サイトカインIL-12p40産生)は,PPに比べて抑制される傾向にあることが明らかになった.このとき,リンパ球の微生物抗原を認識するToll様受容体(TLR)については,PP細胞のT細胞除去画分は腸内共生菌由来Lactobacillusなどの微生物抗原刺激に対して,CP細胞に比べて高いTLR2,4,6のmRNA発現がみられた.このことから,CPを含む大腸部位ではPPを含む小腸部位と比較して、腸内共生菌による恒常的な細菌刺激を強く受けていることが要因となって微生物抗原に対する炎症反応が制御され,腸内共生システムを維持する機構があると考えられた.また,経口摂取して宿主の腸管免疫系に作用が期待されるプロバイオティクスは,まず小腸PPに直接作用して免疫反応を惹起する一方で,大腸部位では管腔内に到達,または定着し,その菌体がCPに対しても取り込まれて免疫反応を誘導するが,小腸部位に比べて強い炎症反応は誘導しない特徴をもつことが示唆された.
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